夜間行進、登山、名刺獲得競争を強要される新入社員
2つ目は、組織が持つ企業文化や風土に起因するケースだ。その典型が共通体験。社員の多くが同じ経験をしている場合、新入社員や若手社員など、まだ組織になじんでいない人にそれを強要してしまう恐れがある。
例えば、新入社員研修や幹部研修で、夜中に40キロ歩いたり、富士山に登ったり、駅前で歌ったり、道行く人から名刺を100枚集めたりと、さまざまな体験をさせられる。社員旅行や年末年始の飲み会の出し物を強要したり、仕事面でも企画100本ノックと称して一晩で100案を考えさせるといったこともあるはずだ。
心理学的に言えば、組織の構成員が同じ体験をすると、組織としての一体感が増す。その場合の共通体験は、難易度が高いほど効果がある。それを乗り越えた人たちには、強烈な仲間意識が芽生えるのだ。
苦難的な共通体験は、未経験の人にはイジメでしかない
ゆえに筆者は、共通体験を全て廃止すべきとまで言っているわけではない。焦点にしているのは、ギャップである。それを乗り越えた人たちにとっては、逆に心の支えにさえなっている場合があるが、組織になじみの薄い人にとっては、大いに違和感を覚え、中にはパワハラと受け止める人もいるということだ。
このようなケースのパワハラを解決する方法は2つしかない。自社の中にあるちょっと過激な共通体験を全て洗い出し、採用時に徹底的に説明し、合意を得て、自社の価値観を理解できる人だけを採用するか、もしくは、多くの人が受け入れる企業文化に変えていくかだ。
同一性が企業の強みだった時代には、こうした共通体験は一体化のための重要な登竜門だった。しかし現在は、考え方だけでなく、国籍を含めて多様性が求められる時代である。自社の中にある理不尽と受け止められかねない慣習を見直す時期に来ている。
上司本人が必死であるがゆえに、メンバーを責め立てるケース
3つ目は、人事制度などの仕組みに起因するケース。上司本人が必死であるがゆえに起こるような事例である。
例えば、真面目な50代の部長が、メンバーを罵倒する、無理難題と思われることも強要する。人事制度上、成果が厳しく求められ、成果を出せないと自分が昇格昇進できないばかりか、降格や左遷もありえる状況などに起こりやすい。
このタイプの人は、自分の部下を自分の手足のように考えてしまうのだ。何としても成功したい。こうすれば上手くいくはずだ。この通りに考えよ。指示の通りに動け。なぜそれができないのだ。早く言われた通りにしろ......。
成果を出すことに必死で、自分の仕事のやり方を部下にも押し付けてしまう。そしてイメージ通りにいかないと苛立ち、その苛立ちをぶつけるように人前で叱責を繰り返す。個人技で仕事ができたタイプの管理職に多い。
このようなケースのパワハラを減らすためには、その上司を心理的に楽にしてあげることと、チームで成果を出す方法をきちんと学ばせることが必要だ。