12年ぶりにクイーンズランド州北部の町ケアンズ付近にサイクロンが上陸。「ジャスパー」と名付けられたこのサイクロンは、上陸して熱帯低気圧になった後も大量の雨を降らせ、1世紀以上前に始まったという観測史上、最大規模の降雨量を記録した。（参照）

住民らが口を揃えて「見たこともないほどの大雨」というほどのこの豪雨の影響で、クイーンズランド州北部各地で大規模な洪水が発生。各所で道路が寸断、広域で断水や停電が発生し、町全体が水没して全住民に避難指示がだされた町もあった。また、住宅地でとり残された人々が屋根の上で救出を求める姿もみられ、軍隊の出動が呼びかけられるほどの事態となった。

一時は、ケアンズ空港に駐機していた飛行機が半分近く水に浸かる様子が報道されるなど、深刻な洪水被害が伝えられていたが、現在は川の水位も下がり始め、空港も再開したという。

洪水が発生した町の中を流されながら泳ぐワニが目撃される！

これから、本格的に被災地の復旧作業が始まるが、今回の記録的な豪雨で発生した洪水は、南はケアンズの南約235 kmのところに位置する町「インガム」辺りから、北はケープヨークの「クックタウン」辺りまでと、広範囲に及び、推定される被害額も膨大だ。

今回の豪雨で、ケアンズの北では放牧されていた牛が流されている様子が目撃されたが、インガム付近で流されていたのは牛ではなかった...

なんと、冠水した町の中を流されていくワニの姿が目撃されたのだ！

オーストラリア北部には2種類の野生のワニが生息しているが、今回の洪水被災地クイーンズランド州北部も生息域の一部であり、川や沼地、海などの水場に「ワニ注意」の看板が立てられているところも多い。

オーストラリアに生息するワニのうち、主に汽水域に生息するイリエワニは、性格が凶暴と言われ、もう1種の主に淡水域に棲むワニ（ジョンストンワニ）は、比較的おとなしいと言われるが、どちらのワニにしても、咬まれたらひとたまりもない。ワニの生息域では、ときおり、人間が襲われて犠牲になることもあるほどだ。

ワニも遠くから見ているだけなら、艶やかなボディがカッコイイ！と思えるほど美しく魅力的だが、近くには来てほしくない生き物のひとつに違いない。

インガム付近は、今回に限らず、道路が冠水してしまうことがよくあるエリアでもある。私自身も以前、ここを通過してケアンズへと向かう際、大雨の影響で幹線道路が冠水して通行できず、何日も足止めを食らったことがあったが、川のようになった道路を流れる水と共にワニが流されてくるかもしれない...と考えただけでもゾッとする。

今回、インガムで流されていたワニは３m 近くはあったというから恐ろしい。その後、捕獲され、住宅街から離れた場所へリリースされたそうだが、人間の世界と野生の世界が近い場所では、思いもよらぬ事故が起きることもある。野生のワニが生息する地域では、先が見えない濁った水場はとくに、近寄らないに越したことは無いと、つくづく思わされる騒動だった。

今回の洪水被害により、クイーンズランド州北部の観光業へのダメージも大きいという。とにかく、一日も早い被災地の完全復旧を祈るばかりだ。〈了〉