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日本社会

高学力の男女で見ても、日本の男女の年収格差は世界で突出している

2026年4月8日(水)12時00分
舞田敏彦 (教育社会学者)
男女の賃金格差

高学力の男女の収入格差は諸外国ではかなり縮小されているが…… photoAC

<潜在能力の高い男女を抽出して比較しても、年収格差を示すジニ係数は先進国で突出している>

現在では、地位や富の配分は人々の能力に依拠することとなっている。いわゆる能力主義の考え方で、「何ができるか」を重視したものだ。何であるか、すなわち「生まれ」で人生の大方が決まってしまうような、近代より前の時代の属性主義とは対をなす。

これは理念としてあるだけでなく、現実に機能もしている。たとえば成人国民を読解力に基づいてグループ分けし、年収の分布を比較してみると、読解力が高いグループほど高年収の人の割合が高い(OECD「PIAAC 2022-2023」)。これはどの国にも当てはまる事実で、例外の国は一つもない。


先週の筆者の記事(「日本の男女の賃金格差は世界でも突出して大きい」)では、日本の年収の男女格差は国際的に見て大きいことを指摘したが、これは男女の能力差ゆえのことかもしれない。では、能力を揃えた比較をするとどうなるか。基礎的・汎用的能力である読解力が高い有業男女を取り出して、年収の分布を比較すると<図1>のようになる。

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潜在能力が高いと思われる男女の比較だが、日本のデータを見ると年収の分布は男女でかなり違っている。男性では上位25%以上が47%と半分近くを占めるが、女性では14%しかいない。そして女性は下位25%未満の低収入層が3分の1となっている。一方アメリカでは、日本ほど差は大きくない。

能力を揃えた比較をしても、日本では年収の男女格差が大きい。職場において公平な能力査定がされていない、というような問題だけではない。まず子ども期における教育機会の格差があり、たとえ学力が同じくらいであっても男子と比べて女子は大学進学を後押しされない。高収入の専門職へとつながる理系学部の場合、特にそうだ。同じくらいのランクの大学を出て、そこそこの企業に入ったとしても、女性は結婚・出産というイベントを経るとキャリアの断絶や、そこからの離脱を強いられる。能力査定以前の問題だ。

それはどの国も同じだが、日本は特に顕著であると言える。高学力の男女の年収分布<図1>を対比し、両者がどれほどズレているかを数値化するジニ係数を出すと、日本は0.488、アメリカは0.221となる(計算方法は先週の記事を参照)。日本の男女格差は、アメリカよりずっと大きい。

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