最新記事
中東

なぜイスラエルは「水」で優位に立つのか──気候変動時代の中東外交

THE GEOPOLITICS OF WATER

2026年1月8日(木)10時50分
シュロモ・ベンアミ (歴史家、イスラエル元外相)
干上がったヨルダンの首都アンマン近郊のワラ・ダム(24年3月) CONTIGO/GETTY IMAGES

干上がったヨルダンの首都アンマン近郊のワラ・ダム(24年3月) CONTIGO/GETTY IMAGES

<数年にわたる干ばつの末、イランのモスクでは人々が天を仰ぎ雨を祈った。しかし、祈りだけでは深刻化する水危機は止められない。気候変動と人為的な水資源管理の失敗が重なり、中東では今、水が重要な地政学的争点として浮上している。そうした中、水資源を戦略的に管理・活用してきたイスラエルは、地域で独自の優位を築いている>


▼目次
気候変動で「水」が中東外交の中心に
「水」を制するイスラエルの戦略

気候変動で「水」が中東外交の中心に

イランでは2025年11月、数年にわたる干ばつが「現代で前例のない」深刻な状態に達した。首都テヘランのモスク(イスラム礼拝所)には大勢の礼拝者が集い、顔を天に向け雨乞いをしたが、祈りの力だけでは根深い水資源管理の誤りと、その背景で加速する気候変動を無効化することはできない。

イランは長年、野放図なダム建設、ずさんな都市計画、過剰な補助金、技術革新への抵抗を続けてきた。そこに干ばつによる砂漠化、森林伐採、持続不可能な農業慣行が加われば、水が主要な国家的リスク要因に浮上したのも不思議ではない。

6年連続の深刻な干ばつでイランの水資源問題は今や重大危機を迎えた。テヘランを支える貯水池の水位は危険なレベルまで低下し、ペゼシュキアン大統領は首都圏約1500万の住民に避難が必要になる可能性があると警告した。イラン全土で見ても、ダムの約10%が干上がっている。

イランだけではない。国連開発計画(UNDP)によると、シリアは06年から11年にかけて「肥沃な三日月地帯で数千年前に農業文明が始まって以来、最悪の長期干ばつと最も深刻な凶作」に直面した。この干ばつに拍車をかけたのが、アサド前大統領の残忍な反体制派弾圧と、それに続く内戦の長期化だ。シリアでは内戦中、ほとんどの水処理施設と揚水施設が破壊された。

トルコがチグリス川とユーフラテス川に大規模ダムと水力発電所を建設したことも状況を悪化させている。これにより下流のシリアとイラクでは両河川の流量が大幅に減少した。やはり長年の紛争と不適切な水管理に苦しむイラクでは1975年以降、水供給量が推定80%減っている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

レバノン、イスラエルとの協議に向け一時停戦提唱 米

ワールド

ネタニヤフ氏の汚職裁判12日に再開 イスラエル、非

ビジネス

米2月PCE価格指数、0.4%上昇に伸び加速 利下

ワールド

イスラエル首相、レバノンとの和平交渉開始指示 米で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 2
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポケモンが脳の発達や病気の治療に役立つかも
  • 3
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで代用した少女たちから10年、アジア初の普遍的支援へ
  • 4
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 5
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 6
    戸建てシフトで激変する住宅市場
  • 7
    高学力の男女で見ても、日本の男女の年収格差は世界…
  • 8
    目のやり場に困る...元アイスホッケー女性選手の「密…
  • 9
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 10
    「嬉しすぎる」アルテミスII打ち上げのNASA管制室、…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで代用した少女たちから10年、アジア初の普遍的支援へ
  • 4
    イラン戦争の現実...アメリカとイスラエル、見え始め…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    「考えの浅い親」が子どもに言ってしまっている口ぐ…
  • 7
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 8
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 9
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 10
    米軍が兵器を太平洋から中東に大移動、対中抑止に空白
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 9
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中