岩手県の30代前半男性の平均年収は、大谷翔平の150億円を加えると約2割も増加する
1つの高校の卒業生くらいのサイズにすると、吊り上がりは凄まじいことになる。<表2>は、先ほどの表の2万3900人を300人に縮小したものだが、この300人の平均年収は357万円。しかしながら、大谷選手1人を加えた301人にして計算すると5340万円に爆上がりする。15倍の増加率だ。「ある高校の卒業生の平均年収は2000万円」というような文言は、注意して読まないといけない。
代表値というのは、分布の特性を1つの数値に丸めたもので乱暴という誹りは免れない。とくに平均値は、一部の極端なデータで値が大きく歪められる欠点を持つ。そうした欠点がないのは中央値(median)だ。ちょうど真ん中の値で、上記の度数分布表から計算すると336万円。中央値は、大谷選手を加えても変わりはない。
身長や体重のような正規分布に近いデータの場合、代表値として平均値を使っても問題は少ないが、分布が歪であったり極端なデータが含まれたりしている場合は、中央値にした方がよい。2022年の厚労省『国民生活基礎調査』によると、65歳以上の高齢者世帯の貯蓄平均値は1625万円。しかし元の分布から中央値を計算すると700万円。「フツー」の実態に近いのは後者だろう。
<資料>
総務省『就業構造基本調査』(2022年)