最新記事
荒川河畔の「原住民」(28)

「スマホはある」「四季を体験したい」新人ホームレスが最も不便に思うことは?

2025年4月26日(土)18時45分
文・写真:趙海成

宇海くんが自分で集めたアルミ缶

宇海くんが自分で集めたアルミ缶。この量なら3000円ほどで売れるだろう

宇海くんのテントの入り口には、多くのアルミ缶がある。彼が自分で拾ったものだ。アルミ缶を集める仕事は「そんなに難しくない」と話す。

私は宇海くんにこう言った。

「アルミ缶を40キロ集めたら、一緒に自転車でリサイクルセンターに運びに行こう」

この機会に、アルミ缶をお金に換える経験をしてみたいと思ったのだ。宇海くんはそれを聞いてとても喜んだ。

私は宇海くんに尋ねた。

「ホームレスになってもう1カ月以上経っていますが、どんな気持ちですか? 孤独や寂しさは感じますか? 一番不便なことはなんでしょうか?」

「僕は元々オタクで、孤独な生活に慣れています。寂しさを感じることはありません。暇があると、Kindle(電子書籍)で小説を読んだり、スマートフォンでニュースを見たりしています。

ホームレスになってから一番不便なことは、トイレに行くことだと思います。毎回100メートル以上離れたところに行かなければなりません」

ホームレスは「不法占有者」であり「警告」を渡される

ほかにも不便なことはある。荒川河川敷に住んでいるホームレスは、休日の賑わいに耐えなければいけない。

橋があり、周辺の運動場には、多くの小中学生が野球の練習をしに来る。子どもたちの叫び声が途切れることなく続き、休んでいるホームレスたちは安らげない。また、彼らの自転車や家族の車が停められている場所は、宇海くんや征一郎さんのテントからそう離れていない。

テントを出たら、子供たちが自分をどんな目で見るだろう? どう思うのだろうか? 自分の姿を見せるべきではないのだろうか。

これは特に新人ホームレスが気にしている問題の一つだと思う。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任し国連大使に指

ワールド

米との鉱物協定「真に対等」、ウクライナ早期批准=ゼ

ワールド

インド外相「カシミール襲撃犯に裁きを」、米国務長官

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官を国連大使に指名
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中