最新記事
ロシア空軍

プーチン自らテスト飛行して見せた核戦略爆撃機がのちに墜落、欠陥隠し疑惑も

Putin Bomber's Reported Malfunction Sparks Russian Nuclear Triad Woes

2024年7月30日(火)21時00分
イザベル・バンブルーゲン
核搭載可能な戦略爆撃機Tu-160Mの副操縦席で得意げなプーチン

ロシア最新鋭の核搭載可能な戦略爆撃機Tu-160Mの副操縦席で得意げなプーチン(右) (2月22日、カザン) EYEPRESS via Reuters Connect

<ロシア最新鋭の超音速核戦略爆撃機「Tu-160M」が、プーチンの搭乗わずか2カ月後に墜落。事故原因を作ったとみられる企業は隠蔽に走り、ロシアの「核の3本柱」も危ういというリーク情報がネットに流出>

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2024年2月、核兵器搭載可能な超音速戦略爆撃機「Tu-160M」に自ら搭乗してテスト飛行をして見せたが、その爆撃機が機能不全に陥ったことが明らかになった。これで、ロシアの弾道ミサイル、潜水艦、戦略爆撃機からなる「核の3本柱」による核抑止が困難になったと、ロシアのあるテレグラムチャンネルが述べている。

【画像】超大型の核戦略爆撃機「Tu-160M」とリーク文書

プーチンは2月、最新式のツポレフ社製戦略爆撃機Tu-160Mに乗り込んで飛行した。NATOは、同爆撃機を「ブラックジャック」というコード名で呼んでいる。プーチンは飛行後に、Tu-160Mは「新型なので、多くの点が新しい。制御しやすく、信頼性も高い」と述べていた。

だが2カ月後の4月11日、カザン航空機製造会社の工場で離陸しようとした際、このTu-160Mが墜落したことが、7月25日に報じられた。報じたのは、ロシア治安当局とつながりがあるとみられているテレグラムチャンネルのVChK-OGPUだ。

VChK-OGPUは、以下のように述べている。「エンジン1基が火を噴き、崩壊して破片が飛び散り、残りのエンジン3基と機体が損壊して火災が起きた。幸い、死傷者はいなかった」

ロシア司法省は7月半ば、VChK-OGPUを、他国の影響下にある「外国の代理人」として登録した。「偽の情報を広めて、ロシア軍に否定的なイメージを植えつけようとした」ためだ。

一方、独立した軍事史研究者を自称する@ChrisO_wikiは、この件に関する最新情報を7月26日、X(旧ツイッター)に投稿した。

@ChrisO_wikiは、ロシアの陸海空3つの発射式核ミサイルに言及しながら、「ロシアの核の3本柱を構成する要素のひとつである戦略爆撃機は、破綻の危機にあるとされている。その原因として、国営統一エンジン製造会社で不正が起きている疑いがある」と書いた。

もし核を搭載していたら

VChK-OGPUは、プーチンが連邦検事総局や連邦捜査委員会、国防省に圧力をかけ、Tu-160Mの機能不全に関して、軍用機や民間航空機向けエンジンのメーカーである統一エンジン製造会社の責任を追及するよう命じた、との情報を得たと述べている。

Tu-160Mの墜落には「妨害行為の形跡」があり、ロシアの核戦力に「重大な損害」を与えたと、VChK-OGPUは述べる。

VChK-OGPUは、自らが報じた内容はリーク書簡にもとづくものだと発表した。リーク書簡は、国営の学術生産公団(Scientific Production Enterprise)から届いたという。

リーク書簡には、以下のように書かれている。「2024年2月22日、Tu-160Mの801番が、ロシア大統領を乗せて長時間の試験飛行を実施したが、誰の目にも明らかなように、このフライトは恐ろしい悲劇に終わったかもしれず、悪くすれば核兵器による世界的なアルマゲドンの引き金になる可能性もあった」

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

FIFAがトランプ氏に「平和賞」、紛争解決の主張に

ワールド

EUとG7、ロ産原油の海上輸送禁止を検討 価格上限

ワールド

欧州「文明消滅の危機」、 EUは反民主的 トランプ

ワールド

米中が閣僚級電話会談、貿易戦争緩和への取り組み協議
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 5
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 6
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 9
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 10
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中