最新記事

ヘルス

わが子にアレルギーがあっても、罪悪感を持たないで...「免疫細胞のストレス」になっていた環境の変化とは

ALLERGY Q&A

2023年6月10日(土)20時00分
メレディス・ウルフ・シザー(本誌記者)
赤ちゃんの保湿

yamasan/iStock

<アレルギー発症率の低下に寄与すると考えられる方法はあるが、そうしなかったからといって自分を責めるべきではない>

『アレルギー──変化する世界が炎症を引き起こす』の著者テリーサ・マクフェールに本誌メレディス・ウルフ・シザーが聞いた。

◇ ◇ ◇


──気候変動はさまざまなアレルギーの要因になっているのか。

気候変動は要因の1つにすぎない。ライフスタイルの変化や人為的な環境の変化が、私たちの皮膚や腸の免疫細胞に与えるストレスに拍車をかけている。

(アメリカの)有害物質規制法には8万5000種類以上の化学物質が挙げられており、70年前には存在しなかった物質と私たちは接触している。口にする食ベ物の種類も劇的に変わって、かつてないほど多くの加工食品を摂取している。

例えば、多くのアメリカ人は十分な量の食物繊維を食事で摂取しておらず、腸内の正常なバクテリアに大きな影響を与える可能性がある。あらゆることが重なって、人間が昔から持っていた免疫システムを急激に悪化させている。

──一連のリサーチであなたが最も驚いたことは。

健康な免疫システムの重要な構成要素であるT細胞が、食事や環境、遺伝などの状況が同じでも、アレルゲンに対して細胞によって異なる判断を下すということだ。私が何かに接触すると、ある細胞は無害だと判断し、ある細胞は無害ではないと判断する。つまり、免疫反応とは、何かを許容する細胞より問題があると判断する細胞のほうが多くなったときに、バランスが崩れるのだ。

──アレルギー疾患は家族に共通することも多い。

発症しないための確実な方法はないが、一般に人生の早い段階で、より多くのものに触れることがいいと考えられている。ほかの子供と交流させる、不必要な抗生物質や抗菌洗浄剤を控える、犬と遊ぶ......そういったことは発症率の低下と関係がある。ただし、アレルギーを持つ子供がいる人は、自分がしたことやしなかったことに罪悪感を抱かないでほしい。

──食物アレルギーに関する助言はここ20年で変化している。当初は、ピーナツなどのアレルゲンを幼児期は完全に避けたほうがいいと推奨されていた。

最新のガイダンスは全て、その時点で分かっていることに基づいている。さらに多くのことが分かれば、また変わるだろう。それが科学というものだ。少なくとも今は、「大きくなるまで控える」より、早期に微量の摂取を始めるほうが、深刻なアレルギー反応を防ぎやすいと言える。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ホンダ、電動化とソフトに10兆円投資 30年までに

ワールド

ロシア軍、ウクライナの全方面で前進している=ショイ

ビジネス

日経平均は3日続伸、約1カ月ぶり高水準 米CPI後

ワールド

中ロ首脳が北京で会談、包括的戦略パートナーシップ深
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 8

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 9

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中