最新記事
ウクライナ戦争

小泉悠×河東哲夫・超分析「仮に停戦してもウクライナが破る可能性もある」

THE DECISIVE SEASON AHEAD

2023年3月29日(水)11時20分
小泉 悠(軍事評論家)、河東哲夫(本誌コラムニスト、元外交官)、ニューズウィーク日本版編集部
小泉悠、河東哲夫

HAJIME KIMURA FOR NEWSWEEK JAPAN, 資料:米シンクタンクISW資料より作成/REUTERS

<日本有数のロシア通である2人が対談し、ウクライナ戦争を議論した。クリミア奪還、爆破陰謀論、戦車旅団......。この戦争はいつ終結に向かうのか>

※本誌2023年4月4日号「小泉悠×河東哲夫 ウクライナ戦争 超分析」特集に掲載した10ページに及ぶ対談記事より抜粋。

昨年2月のウクライナ戦争開戦から1年が過ぎた。この1週間、モスクワではウラジーミル・プーチン大統領と中国の習近平国家主席が、キーウではウォロディミル・ゼレンスキー大統領と日本の岸田文雄首相が会談したが、その間も各地で戦闘は続いている。

政治解決への努力が続く一方、両軍共に一歩も引かず、この戦争の帰趨を決定付ける大きなファクターは結局は軍事力であるようにも見える。

この1年、多くのメディア出演をこなし、正確な情報分析と分かりやすい解説で高い信頼を得てきたのがロシアの軍事・安全保障を専門とする小泉悠氏だ。一方、ロシア公使やウズベキスタン大使を歴任し、ロシア情勢に造詣が深いアナリストが河東哲夫氏。

実は小泉氏が専門家として脚光を浴びる前、まだ「軍事オタク」だった頃に見いだしたのが河東氏で、今から10年以上前、小泉氏を外務省に分析員として推薦したという関係にある。

旧知の2人は、今どのようにこの戦争を議論し分析するか。3月11日に東京で行われ、専門家の知見と洞察がぶつかり合った「超分析」対談を2週連続でお届けする。

(聞き手は本誌編集長・長岡義博)

◇ ◇ ◇


――お2人には戦争開始直後の昨年4月、ニューズウィーク日本版ウェブサイトで対談してもらいました(記事はこちら:【河東哲夫×小泉悠】いま注目は「春の徴兵」、ロシア「失敗」の戦略的・世界観的要因を読み解く)。

今も戦争が終わる気配はありませんが、本日は、この1年の総括と今後の展望をディテールにこだわって議論・分析していただきたい。

昨年の対談では、「この戦争はどのように終わる?」という質問に対し、河東さんは「停戦したとしても、ウクライナは中立国の地位を周囲から保障してもらいながら軍備を維持するだろう。そうすれば、10年後にまた同じようなことが起きるかもしれない」と答えています。

小泉さんは「この戦争はすぐには終わらない。プーチンは戦果があればそれに乗じて戦争を続行するだろうし、負けていればやめるわけにいかない。落としどころが定まらないまま、ずっと戦闘が続くイメージがある」と分析されている。小泉さん、この分析を振り返ってどうですか。

■小泉 われながら当たったと思います。ロシアはもちろんウクライナも、旧ソ連の中の大国でそれなりの国力があり、軍隊の規模も大きい。旧ソ連15カ国の中で2ケタ万人以上の軍隊を持っている国は、この両国しかない。そこにお互い動員をかけたり、外国から武器を調達したりしながら戦っている。どちらも簡単に、純軍事的に音を上げる状況ではない。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中