最新記事

宗教

「地獄に落ちる」と脅され続けた──宗教2世1131名に聞いた、心理的虐待の実情

2022年11月25日(金)19時00分
荻上チキ(評論家、社会調査支援機構「チキラボ」代表)

chiki221126_re.jpg

宗教2世の虐待・権利侵害救済のための法整備に関する要望書 提供元:高橋みゆき

社会調査支援機構チキラボで行った調査に寄せられた、「恐怖による行動の制限」にかかわるような体験談をいくつかみてみよう。
(※具体的な記述が含まれるので、ストレスやフラッシュバックなどに注意してください)


●堕落(祝福前の性行為)をしたら地獄へ落ちる。あなただけではなく、あなたの家族も、先祖も子孫も道連れと教団から教わったり、聞かされた。祝福(結婚)を壊す(離婚)ことも罪であり地獄へ行くと教わった。家族も道連れ(連帯責任)と学んだ。

●勉強やスポーツで良い成績をだすと信心で功徳を得たといわれ、失敗すると前世の業で信心が足りないと言われた。一人暮らしを始め、脱会すると伝えたとき「お前は外道になり、そのせいで家族は地獄に堕ちる」と言われたのは衝撃だった。

●母親に、「女の子の友達と遊ぶなら、お母さん今すぐ死んで地獄に堕ちるよ」と言われた。

●活動を頑張るととにかく褒めちぎられる。逆に、活動以外のこと(娯楽や学校の部活、一般的な習い事など)は「サタンの誘惑」という扱いで、就職や大学進学した人は「誘惑に負けた」と非難されたり陰口を言われたりしていた。

●「世の人(非信者)と仲良くなってはいけない。全てハルマゲドンで滅ぼされるから」「お金持ちを目指してはいけない」「あなたが伝道しないと、他の人に対して血の罪(ハルマゲドンが来ることを知っていたのに、伝道してそれを非信者教えなかったことで、その非信者の責任を負わされるという概念)を負う」と言われた。

●子どもの頃、正座でお経を唱える読経が辛くてサボった日、母がかけていたアイロンで私がうっかり火傷をした時、母は困ったような笑顔で「ほら。サボるから罰が当たった」と言った。火傷の手当ての前に。今でも写真を眺めるように焼き付いている。

●教団では、活動に参加せず、教義のもとで信仰しなくなった者のことを「退転者」と言って非難する。それを聞いて私たちは「ああ(退転者)にだけはなってはいけない」というかなり強いメッセージを受け取る。また、活動に参加しない者を「未活(みかつ:未活動の意)」と呼び、「あそこの家は未活だから」などと聞くと、「退転者」に近いくらい悪の印象を受ける。

●教団を抜けた人の家が火事になったから、抜けるなんて恐ろしいことだと繰り返し祖母が話していた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国、高市首相の台湾発言撤回要求 国連総長に書簡

ワールド

MAGA派グリーン議員、来年1月の辞職表明 トラン

ワールド

アングル:動き出したECB次期執行部人事、多様性欠

ビジネス

米国株式市場=ダウ493ドル高、12月利下げ観測で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 5
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 6
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 7
    Spotifyからも削除...「今年の一曲」と大絶賛の楽曲…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 7
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中