最新記事

中国

習近平が党大会で語っていた不穏な未来

What Xi Reported

2022年10月24日(月)11時55分
シャノン・ティエジー(ディプロマット誌編集長)

【4】一帯一路はやはり格下げ

ユーラシア大陸をくまなくカバーするインフラを整備することで、中国が世界の舞台で巨大な影響力を獲得するという「一帯一路」構想。それが最近、習をはじめ指導部の口から聞かれなくなったと指摘されてきたが、今回の活動報告でもそうだった。

代わりに習が言及したのは、グローバル発展イニシアティブ(GDI)とグローバル安全保障イニシアティブ(GSI)だった。

外交政策との関連で一帯一路への言及はゼロ。どうやら中国指導部におけるこの計画の「格下げ」は決定的のようだ。

【5】揺るがぬ党の指導的役割

中国はこの20年間、自らの驚異的な成長に強力な追い風が吹いていると考えてきた。だが、近年の逆風(アメリカが中国を戦略的な競争相手で、安全保障上の脅威だと位置付けるキャンペーンを張ってきたことなど)で、その認識は変化してきた。

習は活動報告で、現在は中国にとって戦略的なチャンスとリスクが共存する時期だと語った。

過去には「ブラックスワン(前例のない危険現象)と、灰色のサイ(存在するが軽視されがちな巨大リスク)がいつ現実になってもおかしくない」と表現したこともある。こうした波乱に耐える準備をせよ、というのだ。

でも、どうやって? それはもちろん、習の指導に一段としっかり従うことによって、だ。

習は活動報告の中で、揺るがぬ党の指導的役割と党内の一致を繰り返し強調した。

トップ就任以来、党内の腐敗追放を進め、権力基盤の強化を図ってきた習は、気を抜かず努力を続けるよう党員に檄を飛ばすことも忘れなかった。習自身が党総書記として3期目を決めても、党内の支配を固め、異論を封じる取り組みに終わりはない。

中国が直面する厳しい国際環境は、その取り組みを正当化する口実になるだろう。

From thediplomat.com

20240528issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年5月28日号(5月21日発売)は「スマホ・アプリ健康術」特集。健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

鈴木財務相「財政圧迫する可能性」、市場動向注視と日

ワールド

UCLAの親パレスチナ派襲撃事件で初の逮捕者、18

ワールド

パプアニューギニアで大規模な地すべり、300人以上

ワールド

米、ウクライナに2.75億ドル追加軍事支援 「ハイ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 3

    アウディーイウカ近郊の「地雷原」に突っ込んだロシア装甲車2台...同時に地雷を踏んだ瞬間をウクライナが公開

  • 4

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 5

    なぜ? 大胆なマタニティルックを次々披露するヘイリ…

  • 6

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 7

    批判浴びる「女子バスケ界の新星」を激励...ケイトリ…

  • 8

    これ以上の「動員」は無理か...プーチン大統領、「現…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 6

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 7

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 8

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 9

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中