最新記事

ミャンマー

「本国送還なら死刑」 軍政批判したミス・ミャンマー、最後の選択は......

2022年9月28日(水)20時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
ミス・ミャンマーのハン・レイ

ミャンマーへ強制送還の危機にたったハン・レイ ATHIT PERAWONGMETHA / REUTERS

<母国を代表してステージに立った彼女は、苦渋の決断を突きつけられた>

国際ミスコンテストのステージ上から母国の軍政を批判したミス・ミャンマーが、本国へ強制送還される危機を免れた。

2021年3月にバンコクで開かれた「ミス・グランド・インターナショナル2020」の舞台で、クーデター後のミャンマーの惨状を伝え、国際社会に支援を訴えたミス・ミャンマーのハン・レイ。彼女は先週タイで突如入国を拒否され空港で拘束状態となっていた。バンコク・ポストが伝えた。

母国の窮状を涙ながらに訴えたハン・レイ

2021年の「ミス・グランド・インターナショナル2020」のファイナリスト20人の1人に選ばれたハン・レイは、1999年にミャンマーのミャワディで生まれ、ヤンゴン大学で心理学の学位を取得して卒業した才色兼備の女性だ。

彼女はその美貌をいかして、ミャワディ代表として参加した「ミス・ユニバース・ミャワディ2019」に選ばれ、また「ミス・ユニバース・ミャンマー2020」で準優勝に輝いた。

そして、2021年3月にタイのバンコクで開かれた「ミス・グランド・インターナショナル2020」にミャンマー代表として出場。ファイナリスト20人に選ばれ、水着など5つ審査で特別賞を受賞した。

この「ミス・グランド・インターナショナル2020」で彼女はクーデター以降の母国の状況を伝える特別なスピーチを行い、「今日もミャンマーで100人以上が死亡しました」「ミャンマーを助けてほしい」と涙を流しながら訴え、世界的に注目を集めた。

これ以降、ミャンマー軍政による処罰を避けて、ハン・レイはタイで生活してきたが、今月ビザ更新のためベトナムを訪問して帰ってきたところ、21日に突然入国を拒否された。タイ移民局は「入国管理官が彼女のパスポートに不正を発見したため移民法第12条に基づいて入国を拒否した」と発表しているが、実際はミャンマー軍政が彼女のパスポートを無効にしたからだった。

苦渋の決断

強制追放される危機に追い込まれたハン・レイに残された選択肢は2つしかなかった。祖国へ帰るか、第三国への亡命か。

もちろん祖国に帰ることは、軍政を批判した彼女にとって厳しい処罰が待ち構えていることを意味する。実際、軍政は彼女を反逆罪で起訴し、逮捕状を発行している。また今年7月には国際的な批判をよそに民主活動家4人に対して46年ぶりとなる死刑を執行するなど強硬な姿勢を強めており、ハン・レイが帰国すれば裁判で重罪が問われることが予想された。

結局、彼女は国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)を通じて第三国への亡命することを選択し、カナダが難民として受け入れることに応じた。

27日夜、ハン・レイはタイから仁川経由トロント行きの大韓航空機に搭乗した。

【動画】ハン・レイのグラビア映像を見る

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

仏ルノー、S&Pが格上げ 投資適格級に復帰

ビジネス

情報BOX:次期FRB議長有力候補3人、その政策観

ワールド

焦点:トランプ氏のベネズエラ「部分封鎖」、台湾を脅

ワールド

海運マースク、約2年ぶりに紅海航行を完了
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 7
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中