最新記事

宇宙

中国ロケット長征5号Bの残骸、フィリピン当局が回収 両国の火種になる可能性も

2022年8月4日(木)18時35分
大塚智彦
フィリピンの沿岸警備隊が回収した中国ロケット長征5号Bの残骸

回収された中国のロケット長征5号Bの残骸 UNTV News and Rescue / YouTube

<大気汚染だけでは飽き足らず宇宙でもゴミを撒き散らす?>

フィリピンの沿岸警備隊は同国南部のミンドロ海峡の海上で中国が7月24日に打ち上げた衛星ロケットの部品とみられる残骸を発見、回収したことを明らかにした。

これはフィリピンの英字紙「インクワイアラー」が8月3日に報じたもので、落下に伴う船舶や漁民への被害はこれまでにところ報告されていないという。

中国が7月24日に海南省文昌発射場から打ち上げた衛星ステーション関連施設の建設に関わる運搬用ロケット「長征5号B」は地球の周回軌道に乗る前に「ペイロード・モジュール」という部分が剥離。中国当局は地球に落下する危険があると国際社会に警告していた。

ただ中国側は「制御不能により落下地点は不明」との見解を示し、中国政府は「通常は地球の大気圏に突入した場合燃え尽きる可能性が高い」として被害が及ぶ危険は少ないとの見方を示していたのだった。その後31日になってフィリピン近海に落下する可能性が高いと初めて具体的な落下場所に関する情報を明らかにしていた。

今回フィリピンが回収した部品が当該衛星からの「落下物」で「長征5号B」のものと確認されれば、中国政府の無責任な姿勢が問われることになるのは必至とみられている。

こうした中国の宇宙開発に伴う落下物は2020年にも起きている。

「フィリピンは中国の大半の衛星の飛行経路の下にありリスクが高い」とする研究者の警戒を同紙は紹介しており、中国に対して早期で詳細な落下情報の共有が不可欠との見方を示している。

漁師が浮遊物を発見、仲間と回収

同紙の報道によると、南部パラワン州ブスアンガ沖にあるディミパック島の北東27海里(約50キロメートル)沖のミンドロ海峡海上に浮遊する物体を漁師が発見。幅1メートル、長さが5メートルと大きかったため、仲間の漁師と協力して回収したという。

物体は金属製で、上段ロケットに使用される「ペイロード・モジュール」の部品とみられ、回収後にミンドロ島マンブラオにある沿岸警備隊基地に引き渡され、その後マニラに搬送されるとしている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

石油・ガスは今後も重要、燃料としてではない可能性も

ワールド

米感謝祭前の旅客便、政府閉鎖で「ごくわずか」に=米

ビジネス

カナダ、10月雇用が予想外に増加 トランプ関税に苦

ワールド

米国務長官と会談の用意ある、核心的条件は放棄せず=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 2
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 9
    「爆発の瞬間、炎の中に消えた」...UPS機墜落映像が…
  • 10
    「豊尻」施術を無資格で行っていた「お尻レディ」に1…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 8
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 9
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中