最新記事

中国経済

建たない自宅に、ローンを払い続ける中国人 ついに返済拒否の動きで市場に激震

Homemade Problems

2022年7月29日(金)11時13分
ジェームズ・パーマー(フォーリン・ポリシー誌副編集長)
北京の建設現場

中国不動産業界の冷え込みは出口が見えない(7月、北京の建設現場) KEVIN FRAYER/GETTY IMAGES

<不動産バブルが冷え込み始めたことで生じた不条理。デベロッパーの資金難で工事が遅れ、たまりかねた住宅購入者が集団で反撃に>

中国の不動産市場にまたもや激震が走っている。購入した住宅の建設が進まないことに一部の人々がしびれを切らし、住宅ローンの返済を拒否する運動がソーシャルメディアを通じて広がっているのだ。

中国では竣工前に販売される住宅が2005年には約50%を占めたが、今では85%を超えている。こうした場合、竣工の何カ月、場合によっては何年も前からローンの支払いが始まることになる。

建設工事が滞り始めたのは、中国政府が不動産バブルの過熱抑制に舵を切り、不動産開発会社が資金繰りに苦しむようになった2020年以降だ。

住宅ローンの返済拒否は以前からあったが、ここにきてマンション購入者が集団で返済を拒否するといった運動に発展。今年7月中旬には返済拒否が300件を超えた。このままでは3700億ドルの焦げ付きが発生する恐れがある。返済拒否が増えれば、不動産開発会社の資金難はさらに悪化し、建設工事がさらに滞る悪循環に陥りかねない。

それにしてもなぜ、中国では完成していない住宅が売れるのか。供給戸数は十分にあり、先を争って購入しなければならないような状況ではない。主要都市の住宅の空き家率は15〜25%程度だ。

竣工前に購入し、竣工前に転売する

空き家率が高いのは投資のために住宅を買う人が多いから。これまで中国には固定資産税がなく、何十年も住宅価格は右肩上がりで、不動産投資は大きな利益が期待できた。竣工前に購入した物件を竣工を待たずに転売して荒稼ぎする人もいたほどだ。

不動産ブームが続いている間はそれでよかったが、今は違う。不動産バブルが冷え込み始めた今では、不動産開発会社が完成前に住宅を売って、その収益で建設を行うといった綱渡り方式は通用しなくなった。となると問題は建設資金をどこから調達するかだ。

これまで不動産開発会社は住宅の売却で得た資金の50〜70%を地方政府が管理する預託口座に入れるよう義務付けられていた。この預託金は、地方政府が不動産開発会社に条件付きで一部を融通するなど汚職の温床になっていた。

今年に入り中国政府は不動産業界への資金供給と汚職対策のため預託金の引き出し制限を緩和した。だがこの緩和策も、ローン金利の引き下げなどの不動産市場テコ入れ策も奏功せず、今年4、5月は連続して住宅販売が前年同月比59%のマイナスとなった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ウクライナへの軍事支援、国防産業の強化に

ワールド

米政権の大規模減税・歳出法が成立、トランプ氏が署名

ワールド

EU、米関税期限前の合意ほぼ不可能に 現状維持を目

ワールド

ハマス、米停戦案に「前向き」回答 直ちに協議の用意
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 5
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 6
    「登頂しない登山」の3つの魅力──この夏、静かな山道…
  • 7
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 10
    1000万人以上が医療保険を失う...トランプの「大きく…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 5
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 8
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 9
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 10
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギ…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中