最新記事

航空機事故

ボーイング最新鋭機はなぜ落ちたのか

Boeing and FAA Face Credibility Crisis

2019年3月20日(水)19時15分
マイケル・ハーシュ(フォーリン・ポリシー誌記者)

米国家運輸安全委員会の元幹部のピーター・ゴールズは、FAAがエチオピア航空の事故の翌日に通知を出したのは「MCASの搭載に懸念を抱き、その仕組みや誤作動時の対処方法について、操縦士たちに確実に理解させるためだ。こうした情報は、納入時に配布されるマニュアルや運用ガイドでは強調されていなかった」と語る。

ゴールズによれば、必要な情報は当初「マニュアルの中に埋没」していたので、FAAは操縦士がしっかり理解できるように強調しているのだという。さらに、アメリカ人パイロットを含む多くの操縦士は、ライオン・エアの事故が起きるまでMCASの存在に気付いておらず、訓練生の理解となると、さらに遅れている国があるとも指摘した。「途上国などでは、アメリカの航空会社ほどには訓練が行われていないだろう」

magw190320-boeing02.jpg

エチオピア航空302便から回収されたブラックボックスには何が? Baz Ratiner-REUTERS

運航開始1年半の事故

昨秋、サウスウエスト航空パイロット組合のジョン・ウィークス委員長は、米シアトル・タイムズ紙に、同社の操縦士もMCASについて「何も知らされていなかった」と述べている。

インドネシア沖でライオン・エア機が墜落したのは、737MAXの商業運航が始まってから1年半もたたない頃のことだった。事故原因の調査はまだ終わっていないが、MCASが自動的に作動し、勝手に機首を押し下げた疑いがある。しかも操縦士あるいは副操縦士がMCASを遮断しようとした形跡はないという。つまり、遮断できることを2人とも知らなかった可能性がある。

エチオピア航空機の機長は総飛行時間8000時間のベテランだった。だが副操縦士は200時間にすぎなかったと思われ、欧米の主要航空会社が求める水準には遠く達していなかった。

ライオン・エアの事故機から回収されたブラックボックスに基づいて調査したインドネシア政府によると、事故機のパイロットたちは「いわば10分間の綱引きに苦しんだ。新しい失速防止装置(MCASのこと)は容赦なく26回も機首を押し下げ、機体は制御不能に陥った」とシアトル・タイムズは伝えている。「パイロットは機首が下がるたびに引っ張り上げた。しかしなぜか、前日に操縦したパイロットたちがしたように、単純にMCASを遮断しようとはしなかった」とも指摘している。

ボーイング社が11日に発表した声明によると、同社はライオン・エア機の事故後、「安全な737MAXをさらに安全にするため機体制御ソフトウエアの拡張機能を開発している」ところであり、「そのためにFAAと緊密に協力してきた。数週間後には737MAXシリーズに搭載する」予定だという。

ボーイングがライオン・エアの事故を受けてFAAと協力した内容を知る関係者によれば、ボーイングは緊急時の操作を単純化することで安全性を改善できるとみたようだ。それは4月予定の変更に含まれる。

ほかに予定される変更は、ソフトウエアによる自動制御を減らすことや緊急時に(装置でなく)操縦士が素早く対応できる態勢を強化することなどだ。

FAAの資料によると、米国内では737MAX8の制御について最近数カ月に少なくとも5回、操縦士から問題点の指摘があったと、ニュースサイトのポリティコが伝えている。その一部はMCAS関連のようだ。

ちなみにトランプも大統領令を出す前日にツイッターで「航空機の操縦は複雑になり過ぎている」と投稿していた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米政権、ミネソタ州に捜査官「数百人」追加派遣 女性

ビジネス

米商務省、中国製ドローン規制案を撤回 トランプ氏訪

ビジネス

米政権が刑事訴追警告とパウエル氏、利下げ圧力強化の

ワールド

イラン抗議デモで死者500人超、トランプ氏「強力な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画をネット民冷笑...「本当に痛々しい」
  • 4
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 9
    飛行機内で「マナー最悪」の乗客を撮影...SNS投稿が…
  • 10
    決死の嘘が救ったクリムトの肖像画 ──ナチスの迫害を…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 6
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 7
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 8
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 9
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 10
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中