最新記事

自然

希少な新種オランウータンの双子発見! インドネシア・スマトラ島で

2018年7月16日(月)08時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)

タパヌリ・オランウータンは新種


オランウータンを取り巻く環境は悪化する一方 FRANCE 24 English / YouTube

今回双子が確認されたタパヌリ地域はトバ湖南側に広がる広大な密林地域で2017年11月に新種のオランウータンとして報告された「タパヌリ・オランウータン」の生息地域。2013年に同地域で見つかったオランウータンの遺骸などから採取した2頭分のDNA検査の結果から、これまでのスマトラ・オランウータン、ボルネオ・オランウータンとは異なる新種であると国際研究チームが報告、「タパヌリ・オランウータン」と命名された。

同チームによると「タパヌリ・オランウータン」はその個体数が約800とオランウータンの中でも最も絶滅の危機に瀕しているという。

新種発見については2017年11月6日掲載の「新種のオランウータンを密猟と環境破壊から守れ」で報告しているが、最近同地区近くで中国資本による水力発電所の開発計画が進行中で、オランウータンの生息環境への深刻な影響が懸念されている。

環境保護で個体保護との訴え

SOCPの生物多様性観察グループのマシュー・ノウィック代表は地元紙に対して「タパヌリ地区の密林には環境破壊が迫っており、タパヌリ・オランウータンの保護こそが今課せられた使命であり、あらゆる環境破壊の動きに適切に行動したい」と危機感を表明、州政府や中央政府に対し積極的な環境保護を訴えている。

また別のオランウータン保護団体では「双子が確認されたことは、絶滅の危機に瀕しているだけにうれしいニュースであり、さらにそれぞれの個体の保護と環境保護を進めるべきだ」としている。

2017年11月の新種タパヌリ・オランウータン確認の際はインドネシア中、そして世界がそのニュースに注目した。しかしその後約8カ月、たまに取り上げられるオランウータンのニュースは「ボルネオ島のオランウータン、16年で半数以下に(2018年2月)」「動物園来園者が投げた煙草を吹かすオランウータン(2018年3月)」「西カリマンタン州でペットとして飼われていたオランウータンの子供2頭を保護団体が救出(同年同月)」など芳しくないものばかりなのが現実だ。

SOCPなどでは世界的にも希少な「オランウータンの双子誕生」のニュースがさらに国際社会やインドネシア国内でのオランウータン保護運動に対する関心を高め、本格的な環境保護運動に結びつくことを希望している。


otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

ニューズウィーク日本版 教養としてのBL入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月23日号(12月16日発売)は「教養としてのBL入門」特集。実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気の歴史と背景をひもとく/日米「男同士の愛」比較/権力と戦う中華BL/まずは入門10作品

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ポーランドが対人地雷生産へ、冷戦後初 対ロ防衛強化

ビジネス

アマゾンなど3社の株主、米移民政策の影響開示を要請

ビジネス

仏経済、26年上半期は0.3%成長へ 消費安定=I

ビジネス

アングル:フォードのEV撤退、政策転換と需要減の二
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中