最新記事

投資

仮想通貨、取引所介さぬ「相対取引」が拡大 相場に影響与えず大口取引

2018年4月4日(水)09時21分

4月2日、インターネット電話「スカイプ」を介した仮想通貨の相対取引ビジネスが拡大している。写真はスカイプのロゴとウェブカメラ。2015年撮影(2018年 ロイター/Dado Ruvic)

インターネット電話「スカイプ」を介した仮想通貨の相対取引ビジネスが拡大している。相場を荒らす可能性のあるオンライン取引所での取引を避けたい大手投資家が商売相手だ。

仮想通貨の相対取引が始まったのは約5年前で、約20人のトレーダーが富裕投資家、ビットコインのマイナー(採掘者)、決済業者、ヘッジファンドなどを相手に、日々数千万ドル程度の取引を行っている。大半はスカイプなどのメッセージングサービスを利用している。

仮想通貨に特化したヘッジファンド、ガロワ・キャピタルの創業者ケビン・シュー氏は「相場を大きく動かしたり、急落を引き起こさずに大口の取引をしたい時には、相対取引(OTC)デスクを通すのが一般的だ」と説明する。

相対取引に携わる業者にはDRWホールディングス傘下のカンバーランド・マイニング、ゴールドマン・サックスが支援するサークル、デジタル・カレンシー・グループ傘下のジェネシス・グローバル・トレーディングなどがある。

カンバーランドのグローバル・トレーディング責任者、ボビー・チョー氏は「われわれはグローバルかつ無料に近い道具を必要とし、スカイプがそれを提供してくれる」と述べた。スカイプはこの記事へのコメントを控えた。

ディーラーによると、OTCデスクが取り扱う最低取引額は7万5000ドルから25万ドルの範囲で、1日の取引高は1億ドルを超えることが多い。

ジェネシス幹部によると、同社の1日の平均取扱高は現在7500万─8000万ドルと、1年前の10倍に増えた。

オンライン取引所で大掛かりなハッカー攻撃などの事件が相次いだことも、相対取引の魅力を高めているのかもしれない。あるOTCトレーダーは「大手取引所でハッカー攻撃が起こると、取扱高が増える傾向にある」と言う。

OTC取引の決済は銀行振り替えで行われ、仮想通貨はデジタル財布に送金される。

もちろん、OTCならではのリスクもある。取引所に比べて価格発見機能が不透明で、決済リスクも高まる。マネーロンダリング(資金洗浄)に使われないようにするには、ブローカーが取引相手を精査してくれると信頼するしかない。

また、事業が拡大しているにもかかわらず、規制当局が仮想通貨取引のルールを明確化していないため、OTCデスクは手探りの状態に置かれている。

(Anna Irrera記者 Jemima Kelly記者)

[ニューヨーク/ロンドン 2日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 世界最高の投手
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月18日号(11月11日発売)は「世界最高の投手」特集。[保存版]日本最高の投手がMLB最高の投手に―― 全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の2025年

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

MAGA派グリーン議員、トランプ氏発言で危険にさら

ビジネス

テスラ、米生産で中国製部品の排除をサプライヤーに要

ビジネス

米政権文書、アリババが中国軍に技術協力と指摘=FT

ビジネス

エヌビディア決算にハイテク株の手掛かり求める展開に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 3
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 4
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 5
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 6
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    反ワクチンのカリスマを追放し、豊田真由子を抜擢...…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中