最新記事

領土問題

にらみ合う中国・インドの軍部隊 国境紛争じわじわと再燃

2017年8月18日(金)17時00分

8月8日、インドと中国の両軍が、国境地帯で7週間にわたり対峙している。写真は中国とインドの国旗。インドが実行支配するアルナーチャル・プラデーシュ州で2009年11月撮影(2017年 ロイター/Adnan Abidi)

インドと中国の両軍が、国境地帯で7週間にわたり対峙している。関係筋2人によると、解決に向けた対話は決裂し、インド政府による外交努力は行き詰まりを見せている。一方、中国の国営メディアは「報復は避けられない」と喧伝(けんでん)している。

舞台となっているのは、インドの北東部シッキム州に近いブータン西部の係争地ドクラム高地で、中国とも国境を接している。

中国側の説明によると、6月初旬にインド軍が境界を越えて中国領に入り、中国の道路建設作業を妨害した。それ以降、インド陸軍と中国の人民解放軍が対峙を続けている。

中国は、中国とインドの同盟国であるブータンが領有権を主張するドクラム高地から、インドが軍を撤退させるよう要求している。

だが、インドが対話のなかで、見返りに中国に軍を250メートル後退させるよう提案したのに対し、中国は返答しなかったと、インドのモディ政権に近い関係筋は明らかにした。

中国は、水面下で行っていた外交戦略のなかで、政府高官から許可が得られるのであれば、100メートル後退するという案を持ち出して対抗した。

しかし、中国がドンランと呼ぶ同地域において、緊張激化の警告を強めていることを除いては、対話が再開されるという兆しはない。

「行き詰まっている。現在、全く動きがない」と、もう1人の関係筋は語る。

中国外務省はインドに撤退するよう繰り返し求めていたが、同省から対話についてのコメントは得られなかった。

インド軍は、道路が拡張されれば、北東部の同地域で中国軍が近すぎる存在となり、安心できなくなると主張している。

今回の対立は、1980年代に3500キロに及ぶ国境地帯で数千人規模の両軍兵士がにらみ合って以来、最も深刻なものだと、軍事専門家は指摘する。

中国はインドが道理をわきまえることを期待して、戦争に突入するのをとどまっていると、中国共産党機関紙「人民日報」系の国際情報紙である環球時報は8日伝えた。同紙は敵対的な解説を矢継ぎ早に掲載している。

「コントロール不能に陥りつつある状況から発せられる警告をモディ政権が無視し続けるなら、中国が報復措置に出ることは避けられないだろう」との見方を同紙は示した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中