最新記事

カタール危機

UAE発ドキュメンタリー「9.11はカタールの仕業」

2017年7月25日(火)18時30分
ベタニー・アレン・イブラヒミアン

問題のドキュメンタリーを制作したUAEのシェイク・マンスール Stephanie McGehee-REUTERS

<ツインタワーに激突した旅客機のハイジャック犯を多数輩出しているUAD、サウジの側が9.11をカタールのせいにするのは盗人猛々しいが>

サウジアラビアなどとともに突然カタールとの国交を断絶し、国境封鎖を続けているアラブ首長国連邦(UAE)で、今度は、カタールが2001年9月11日のアメリカ同時多発テロを支援していたというドキュメンタリー番組が公開される。

【参考記事】国交断絶、小国カタールがここまで目の敵にされる真の理由

スカイニュース・アラビアが7月27日に公開する「カタール マンハッタンへの道」だ。スカイニュース・アラビアは、アブダビ首長国の首長の異母兄弟で、起業家でもあるマンスール・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン(シェイク・マンスール)がオーナーの1人に名を連ねている。

この番組は、9.11の首謀者とされるアルカイダの幹部、ハリド・シェイク・モハメドが1996年にカタールを訪問したことや、「カタールが長きにわたってハリド・シェイク・モハメドを支援し、保護や経済的支援を与え、彼のテロ活動の目的と計画の達成を後押しした」ことに焦点を当てていると、ガルフ・ニュースは報じている。

【参考記事】カタール危機でアジアが巻き添えに

カタールのほうも非難し返す。同国の駐米大使シェイク・メシャアル・ビン・ハマド・アル・ターニは、「カタール人よりUAEの人間こそ、ニューヨークのツインタワーに飛行機を激突させたハイジャック犯の仲間だった」と述べた。「UAEは、9.11に関するアメリカ議会独立調査委員会の報告書で、テロリストのためにマネーロンダリングを行った唯一の国とされた」

関係修復に奔走するアメリカ

確かに、1996年にカタール政府の高官がハリド・シェイク・モハメドをアメリカ中央情報局(CIA)からかくまったという報道は有名だが、新しい情報というわけではない。

そして9.11の実行犯19人の中に、カタール国籍は1人もいない。その一方で、UAE出身は2人、サウジアラビア出身は15人だ。ウサマ・ビンラディンはサウジアラビアで生まれ育ったし、現在グアンタナモ米軍基地に収監されているハリド・シェイク・モハメドはパキスタン人だ。説得力はあまりない。

【参考記事】カタール孤立化は宗派対立ではなく思想対立

封鎖されたカタールは、自国よりもはるかに大きなサウジアラビア、UAE、エジプトに対抗するため、国際社会に訴え、アメリカのワシントンでロビー活動を行っている。

アメリカの国務長官レックス・ティラーソンは7月にペルシャ湾岸諸国に出向き、各国を行き来して、いずれもアメリカの同盟国であるカタールとサウジアラビアの関係修復を試みている。

だが、テロリストを支援しているかいないかで争っている限り決着はつかないだろう。なぜなら、どちらも支援しているからだ。

(翻訳:ガリレオ)

From Foreign Policy Magazine

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型ハイテク株に買い戻し 利下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中