最新記事

イラン

テヘラン同時多発テロ 国会と霊廟を襲撃、3つ目の計画は阻止

2017年6月7日(水)19時54分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

6月7日、国会議事堂襲撃に対処するイラン治安部隊 Tasnim News Agency/Handout via REUTERS

5月に大統領選が行われたばかりのイランで、同時多発攻撃が発生した。イランメディアによると、6月7日朝、首都テヘランの国会議事堂で銃撃があり、テヘラン郊外にあるイラン革命の指導者ホメイニ師を祀る霊廟でも自爆攻撃があった。

国営の英語ニュース局プレスTVは「テヘランで2件のテロ攻撃」と報道。各種報道によれば、男の銃撃犯4人が警備の厳重なはずの国会に侵入し、警備員と銃撃戦を繰り広げたという。10人以上が負傷、4人が死亡と伝えられている。国会は閉鎖された。

議員らの証言として、犯人らがカラシニコフ自動小銃や拳銃で武装していたこと、事態はすでに収束していることをプレスTVは伝えている。

(国会議事堂での襲撃犯と治安部隊の銃撃戦の様子)


一方、半国営のファルス通信によれば、ホメイニ廟は4人の銃撃犯が襲撃。霊廟内で発砲し、1人が死亡、負傷者が多数出ている。犯人は1人が死亡、女1人が自爆。残る2人のうち、1人は毒物で自殺し、女1人が拘束されたようだ。

イラン情報省は、2件の攻撃を「テロ」と断定。また、ファルス通信によれば、テロ計画はもう1件あり、3つ目のグループは実行前に逮捕したと情報省が発表している。

先の大統領選では現職のハサン・ロウハニ大統領が改革派を取り込んで再選を果たしたが、6月5日以降、テロ組織への支援やイランとの密接な関係を疑われたカタールが、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)などから国交を断絶されるという一件があったばかり。中東のスンニ派諸国とシーア派国家イランとの関係悪化が懸念されていた時期だった。

【参考記事】歴史的転換点かもしれないイラン大統領選挙
【参考記事】国交断絶、小国カタールがここまで目の敵にされる真の理由

また、今もラマダン(断食月)の最中で、スンニ派のテロ組織ISIS(自称イスラム国)が欧米との「全面戦争」を呼び掛け、実際にロンドンなどでテロが頻発している時期の出来事でもある。

しかしCNNは、イランでは銃所有が禁じられており、これまでテロが少なかったことを指摘。昨年のラマダンの時期には、イラン政府が「大規模なテロ計画」を未然に防いだと発表したという。最後にイランで起こった大規模なテロは、2010年にスンニ派過激派組織がモスク(イスラム礼拝所)で起こした自爆テロで、39人が死亡している。

今回のテヘラン襲撃では、ISISの系列メディアが早々に犯行声明を出した。テロの珍しいイランで、欧米で多いローンウルフ(一匹狼)型のテロともおそらく異なり、さらにはソフトターゲットでない国会議事堂が標的となっただけに、衝撃は大きい。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、シカゴ・ロス・ポートランドから州兵撤退

ビジネス

米国株式市場=続落、25年は主要3指数2桁上昇 3

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、年間では2017年以来の大

ワールド

ゼレンスキー氏「ぜい弱な和平合意に署名せず」、新年
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 5
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 8
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中