最新記事

建設計画

メキシコ国境、壁の代わりに「次世代交通網」を:トランプ政権に提案

2017年4月13日(木)16時45分
高森郁哉

国境の壁の代わりに、チューブ型列車システムを。 Photograph: Otra Nation

トランプ米大統領が進めている、米国とメキシコの国境を隔てる壁の建設計画。これを受けて、米国税関・国境警備局が国境の壁の設計案を公募したところ、米国・メキシコ両国の技術者の合同チームが大胆なプランを提出した。それは、国境沿いに東西両岸を結ぶ超高速列車のネットワークを建設する、というものだ。「タイム」、「デイリー・メール」などが報じている。

提案の概要

提案の名称は「オトラ・ネイション(Otra Nation)」(otraはスペイン語で「別の、ほかの」の意味)。不法越境者を阻止する「トランプの壁」とは異なり、総延長1900キロメートルに及ぶ国境沿いの土地を「米国とメキシコの両国民が自由に行き来できる領土」に設定する。この領土に、高架チューブの中を超高速で走行する列車「ハイパーループ」のネットワークを敷設。さらに、9万平方キロメートルのソーラーパネルも設置して約800万ギガワット時(GWh)を発電し、この列車網と近隣の地域に電力を供給する計画だ。

技術者チームの試算によると、交通網を除く建設費は約150億ドルで、国土安全保障省の内部報告で見積もられた216億ドルよりも安い。ただし、ハイパーループ網の建設費は、インフラの更新費も含め向こう10年で1兆ドル超になる見込みという。

ハイパーループとは

オトラ・ネイション計画の柱となるハイパーループは、テスラ・モーターズやスペースXを創業したイーロン・マスク氏が推進している次世代交通システムだ。自動運転カプセルが高架チューブのなかの真空と磁石の強力な力で引き寄せられて移動し、移動スピードは最高で時速約1220キロに達するという(ニューズウィーク日本版の記事)。

Nhypee0413.jpg

イーロン・マスクの構想

交通網の予想図には、東岸のメキシコ領内のマタモロスと西岸の米領内サンディエゴを結ぶ本線に加え、米南部のダラスとメキシコの首都メキシコシティを結ぶ路線など、国境を越えて南北に走る複数の支線も描かれている。

otranation_map02-4000.jpg
技術者チームは、今回の提案を3月20日に両国政府へ提出した。米国税関・国境警備局は今後、応募された提案を検討し、国境の壁のプロトタイプを建設するために契約する10社を6月に発表する予定だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、ガリウムやゲルマニウムの対米輸出禁止措置を停

ワールド

米主要空港で数千便が遅延、欠航増加 政府閉鎖の影響

ビジネス

中国10月PPI下落縮小、CPI上昇に転換 デフレ

ワールド

南アG20サミット、「米政府関係者出席せず」 トラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 8
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 9
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 10
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中