最新記事

アメリカ政治

トランプ入国禁止令、イスラム教差別でまた差し止め

2017年3月17日(金)17時25分
カシア・ コバチ

米連邦最高裁で争われる可能性も Larry Downing-REUTERS

<入国禁止令が2度目の差し止め処分となったトランプ。反撃に出るようだが、重要なのは最後に行き着く最高裁判事の顔ぶれだ...>

イスラム教徒らの入国を一時禁止する新たな大統領令が、米ハワイ州ホノルル連邦地裁による執行差し止め処分を受けたのに対し、ドナルド・トランプ米大統領は米連邦最高裁まで争う姿勢だ。

【参考記事】トランプ、入国制限大統領令の差し止めを解除できるか?

16日の集会でトランプ大統領は、この判決はアメリカを「弱く見せる」、「ばかげた判断」と批判。「もう時間は無い、国境を見てみろ」と支持者に呼びかけ、連邦最高裁への上訴を含め「必要な限りどこまでも」争う意志を示し、「我々が勝つ」と述べた。

新たな入国禁止令は、イラン、リビア、シリア、ソマリア、スーダン、イエメン計6カ国のイスラム圏の市民が対象。90日間の入国が禁止されるほか、すべての難民の受け入れを120日間停止する。1月に執行停止となった大統領令からイラクを削除するなどして、トランプ米大統領が今月6日に署名した。

ハワイ州連邦地裁のデリック・ワトソン裁判官は、大統領令がイスラム教徒に対する差別を意図していると述べた。

東部メリーランド州の連邦地裁でも16日、大統領令について一時的な執行停止を命じた。差し止めを命じたのはハワイ州に続いて2例目で、この動きは他の州にも広がっている。メリーランド州のセオドア・チュワン判事は「入国禁止令は憲法に規定された信教の自由を侵害する」とし、「アメリカに分裂の種がまかれるのを避けるために、憲法の基本的原則を守る必要がある」と言い渡した。

トランプ大統領はこの決定を「司法の行き過ぎ」と批判。必要なら最高裁まで戦う、と支持者に宣言した。現在、最高裁判事は定員9人のところ在職は8人でリベラル派と保守派が拮抗している。

【参考記事】トランプの入国禁止令をめぐる違憲裁判は、この先どうなる?

トランプから最高裁判事に指名された保守派のニール・ゴーサッチが米上院で承認されたとしても、トランプの大統領令が執行されるとは限らない。最高裁判所の仕事は党派政治に屈することなく、入国禁止令が合憲か違憲かを判断することだからだ。

■米政府のサイトで8人の最高裁判事をチェック!
(名前、肩書き、在任期間、肩書き、支持政党、指名した大統領、就任日)

International Business times

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インフレ上振れにECBは留意を、金利変更は不要=ス

ワールド

中国、米安保戦略に反発 台湾問題「レッドライン」と

ビジネス

インドネシア、輸出代金の外貨保有規則を改定へ

ワールド

野村、今週の米利下げ予想 依然微妙
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    『ブレイキング・バッド』のスピンオフ映画『エルカ…
  • 10
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中