最新記事

アメリカ政治

トランプ政権の黒幕で白人至上主義のバノンが大統領令で国防の中枢に

2017年1月30日(月)19時50分
ニコラス・ロフレド

トランプの大統領令の作者といわれるバノン首席戦略官 Jonathan Ernst-REUTERS

<選挙戦中から恐れられていたことだが、いよいよトランプ政権の極右、バノン首席戦略官の暴走が始まったかもしれない。選挙の洗礼も議会の審査も受けていない男が安全保障の最高意思決定機関NSCの常任メンバーにとり立てられて、我慢も限界だという声が上がっている>

 イスラム教徒が多数派の中東・アフリカの7カ国の国民の入国を一時禁止し、内戦から逃れるシリア難民の受け入れを無期限停止する──こんな出来すぎた大統領令を、ドナルド・トランプが一人で考えられたはずはない、と信じる人は少なくない。トランプ米大統領でなければ一体誰の仕業か。多くが黒幕と疑い、何としても暴走を止めたいと思っている男が、スティーブン・バノン大統領上級顧問兼首席戦略官だ。

 大統領令が出た翌日の土曜、「バノン大統領を阻止せよ(#StopPresidentBannon)」のハッシュタグがツイッターで拡散された。やり玉に上がったバノンは、右派ニュースサイト「ブライトバート・ニュース」の前会長だ。米政治情報サイトのポリティコによると、バノンはスティーブン・ミラー大統領補佐官と組んで、関係官庁にほとんど相談もなく、大統領令の草案を作成したという。

【参考記事】トランプ次期大統領とともに躍進する右派ニュースサイト「Breitbart」

バノンはプロパガンダの黒幕だ。権力を守るためなら、今後も手当り次第に政治的な火種を利用するだろう。


 金曜にトランプの大統領令が署名と同時に発効すると、全米に混乱が広がった。土曜に連邦判事が大統領令の効力を部分的に停止する判断を下すまで、国内のあちこちの空港で、入国を認められず身柄を拘束される人が相次いだ。

【参考記事】トランプの首席戦略官バノンは右翼の女性差別主義者

連邦機関、当日まで発令知らず

 数十年続いた移民政策の突然の変更にも、政府は「準備万全」だったとトランプは主張した。だが米CNNは、国土安全保障省の職員が大統領令の存在を知ったのは、発令当日だったと伝えた。バノンとミラーは、大統領令はグリーンカード(アメリカ永住権)を持つ人には適用されないとした同省の手引きを却下したとの報道もある。ただし日曜にホワイトハウスは、グリーンカード保持者は空港で個別の審査が必要なものの、入国禁止の対象外だと説明した。

【参考記事】オルト・ライト(オルタナ右翼)とは何者か
【参考記事】alt-right(オルタナ右翼)とはようするに何なのか

 土曜にトランプが署名したもう1つの大統領令によって、そのバノンの米政府内における地位はますます強力なものになった。バノンは、安全保障の最高意思決定機関である米国家安全保障会議(NSC)で閣僚級委員会の常任メンバーに引き上げられた。代わりに情報機関を統括する国家情報長官や、米軍のトップである統合参謀本部議長を常任から非常任に格下げした。これにより、彼らが委員会に出席するのは彼らの専門知識に関わる懸案事項について議論する場合に限られることになった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏復権、バイデン氏続投より債券に弱気=ビル

ワールド

ラファにイスラエル軍の空爆、パレスチナ人少なくとも

ワールド

トランプ氏がリバタリアン党大会で演説、ブーイング浴

ワールド

リトアニア大統領選決選、現職ナウセーダ氏が勝利宣言
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    カミラ王妃が「メーガン妃の結婚」について語ったこ…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    胸も脚も、こんなに出して大丈夫? サウジアラビアの…

  • 9

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 10

    アウディーイウカ近郊の「地雷原」に突っ込んだロシ…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 3

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 4

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 5

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 6

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 7

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 8

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 9

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 10

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中