最新記事

イギリス政治

英政界にまた衝撃、ボリス・ジョンソンの代わりにこの男??

2016年7月1日(金)18時06分
アラステア・スローン

次期英首相?手のひらを返したマイケル・ゴーブ Neil Hall-REUTERS

<英EU離脱派のリーダーで次期首相とみられていたボリス・ジョンソン前ロンドン市長が突然、英保守党首選への出馬断念を発表した。党首選でジョンソンを支援してくれるはずだった英司法相マイケル・ゴーブ、これまで自分はリーダーにふさわしくない、ジョンソンこそふさわしいと言ってきたゴーブが、裏切って先に立候補してしまったからだ。それも理由は、ジョンソンには「指導力がない」からだという。イギリスの次の首相になるかもしれない人物だが、ネオコンとも気が合う強硬派らしい。また野心家の妻が後ろで糸を引いている>


ボリス・ジョンソンが立候補しないと語った瞬間

 労働党の運動員だったマイケル・ゴーブが保守党に鞍替えしたのは15歳の時。「フォークランド紛争がきっかけだ」と、ゴーブは語っている。1982年、アルゼンチンの軍事政権が、イギリスが実効支配していたフォークランド諸島に軍隊を派遣した。大英帝国全盛の頃ならあり得なかった屈辱と、イギリス世論は激怒した。「私は衰退が当たり前になったこの国で育った。将来の希望を信じる指導者が、イギリスには何世代もいなかったのには恐れ入る」

【参考記事】特権エリートに英国民が翻した反旗、イギリス人として投票直後に考えたこと

 イギリスの歴代首相、とりわけブレア、サッチャー、キャメロンは就任前は外交問題にほとんど関心がなかったが、ゴーブは善か悪かで世界を二分するタカ派だ。

 教育改革と司法改革の実績で知られるゴーブが過去30年近く、一貫して関心を持ち続けたのは外交政策だ。タイム誌のコラムニストとして、30年に及んだ北アイルランド紛争の歴史的和平を「容認できない譲歩」と評し、当時のブレア首相を「ポピュリスト」とけなしたこともある。しかし同じブレアがイラクのサダム・フセインに敵対的な姿勢を示すと、ゴーブは「もうこの感情を抑えられない......トニーが大好きだ!」と態度を一変させた。

ネオコンから英雄扱い

 サウジアラビアやパキスタン、ジンバブエの体制転換を求めたこともある。米政界で一時勢力を持っていたネオコン(新保守主義)の一派からは「英雄」扱いされ、2005年に出版されたネオコンの記念碑的なエッセイ集『ザ・ネオコン・リーダー』では、サッチャーやブレアと共に寄稿していた(イギリス人の寄稿者はこの3人だけ)。そのエッセイでゴーブは、ナチスドイツに奪われないためにフランス海軍の艦艇を沈めた第二次大戦中のチャーチルの決断について書いている。

【参考記事】英国で260万語のイラク戦争検証報告書、発表へ ──チルコット委員会はどこまで政治責任を追及するか

 政界に入ってからの10年ほどの間にも、イスラム過激派のハマスやヒズボラへの対応でウィリアム・ヘイグ元外相を弱腰と怒りをぶつけている。昨年のイランとの核合意──イランが核開発を縮小する見返りに欧米は経済制裁を解除する──も軟弱な譲歩と見なしていた。2013年にシリアへの軍事介入が議会で否決された時には、口論になった労働党議員を「ナチス野郎」と罵倒している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ紛争、エスカレートさせないよう米に望む=

ビジネス

2%物価上昇まだ定着せず、持続的達成を日銀に期待=

ワールド

トランプ氏は「被害少女知っていた」と米富豪記述、資

ワールド

豪10月就業者数は予想以上に増加、失業率も低下 利
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編をディズニーが中止に、5000人超の「怒りの署名活動」に発展
  • 4
    炎天下や寒空の下で何時間も立ちっぱなし......労働…
  • 5
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 6
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 7
    ついに開館した「大エジプト博物館」の展示内容とは…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    冬ごもりを忘れたクマが来る――「穴持たず」が引き起…
  • 10
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 7
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 10
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中