最新記事

イラク

IS敗走後に集団墓地と数100人の遺体

イラクの少数派ヤジディ教徒をISは大量に虐殺した

2015年12月1日(火)17時30分
ルーシー・ウェストコット

「解放軍」 シンジャールの奪還に向かうクルド人民兵ペシュメルガ Ari Jalal-REUTERS

 イラク北部のシンジャール付近で、少数派ヤジディ教徒の多数の遺体を埋めた集団墓地が次々と発見されている。遺体の少なくとも一部は生き埋めにされたものだという。

 BBCの報道によると、イラク当局は先週、110人以上の遺体が埋まった場所を発見した。場所はシンジャールから約10キロ西で、シンジャールが敵の手に落ちた場合備えて手製爆弾(IED)が仕掛けられていたと、アルジャジーラが伝えている。

若い女は売り、年寄りは生き埋め?

 先週末にはイラク当局が、さらに3カ所の集団墓地を発掘。遺体の数は合わせて80~100人分になるという。これでイラク当局が発見したヤジディ教徒の集団墓地は少なくとも7カ所にのぼる。2週間前には、ヤジディ教徒の女性ばかり40~80人の遺体が埋められた場所が見つかった。性奴隷として売ったりレイプするには「年を取り過ぎている」とみなされた女性たちのようだ。

 2014年8月にイラクとシリアを結ぶ要衝シンジャールを制圧したISIS(自称「イスラム国」、別名ISIL)は、この地に住むヤジディ教徒を異教徒とみなして暴虐の限りを尽くした。男性は殺害され、何百人もの女性と少女は性奴隷として捕らえられ、残ったヤジディ教徒はシンジャール山の山頂に逃れたが、そこでもイスラム教への改宗を無理強いされ、拒めば殺害された。

 アメリカ主導の有志連合はその直後からシンジャールのISISに空爆を開始。今年11月には、空爆による支援を受けて、シリアの少数民族クルド人民兵組織ペシュメルガが地上で猛攻を仕掛け、シンジャールを奪還した。

 ISISが敗走した後には多くの集団墓地が残された。

 ISISはヤジディ教徒、ならびに他の宗教・民族的マイノリティーを大量に殺害し、「ジェノサイド、戦争犯罪、および人道に対する罪を犯した疑いがある」と国連は述べている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ギニアビサウでクーデターか、軍幹部が権力掌握宣言 

ワールド

英、既存石油・ガス田での新規採掘を条件付き許可へ 

ビジネス

中国工業部門利益、10月は5.5%減 3カ月ぶりマ

ワールド

暗号資産企業の株式トークン販売巡る米SECの緩和措
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 5
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 6
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 7
    ミッキーマウスの著作権は切れている...それでも企業…
  • 8
    あなたは何歳?...医師が警告する「感情の老化」、簡…
  • 9
    ウクライナ降伏にも等しい「28項目の和平案」の裏に…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 9
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中