最新記事

過激派

米軍に解放されたISの人質が味わった地獄

イエスと言えば処刑され、ノーと言えばイエスと言うまで殴られる不条理

2015年10月29日(木)17時00分
ニック・ウィンチェスター

奇跡の生還 救出されISから自由になった人質たち Kurdistan Region Security Council-REUTERS

 米軍とクルド人部隊はイラク北部で先週、テロ組織ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)に拘束された人質の救出作戦に踏み切った。アラブ人の人質を多数解放した。うち4人がニューヨーク・タイムズの取材に応じ、監禁中の凄まじい体験を語った。

 救出された人質は69人。米軍特殊部隊の兵士1人が死亡した。

 人質はイラク政府または米当局と関係があるとみられてISISに捕まった人々で、監禁中に暴力を振るわれ、電気ショックを受けたりビニール袋で窒息寸前にさせられるなどの拷問に遭った。数人の人質は座らされて、ISISが行った首切り処刑の映像を見せられた。人質の1人は「おまえも数日後に処刑する」と脅されたという。

 取材に応じた人質の1人、35歳のムハンマド・ハッサン・アブドゥラ・アル・ジブリは携帯電話に登録していた米兵2人の電話番号がISISに見つかり拘束された。尋問は理不尽なものだったとジブリは言う。「イエスと言えば処刑されるし、ノーと言えばイエスと言うまで殴られる」

 もう1人の人質で35歳のムハンマド・アブド・アフメドはイラク軍の兵士で、休暇中にISISに捕まった。彼は執拗な拷問で精神的に追い詰められ、この地獄から逃れるにはISISに言われた罪を認めて、調書に署名するしかないと思ったという。署名すれば処刑が待っていることは承知の上だった。

 この救出作戦は元々、ISISの捕虜になったクルド人部隊ペシュメルガの兵士を解放するための作戦だった。アルジャジーラが伝えた米国防総省のピーター・クック報道官の発表によると、救出された人質のうち少なくとも20人はイラクの治安部隊のメンバーだが、それ以外の多くは民間人とみられる。

 クルド自治区安全保障会議は声明を発表。今回の作戦で69人の人質が解放されたことを確認し、加えてISISの戦闘員20人が死亡し、5人を拘束したと伝えた。

 クルド自治区安全保障会議は25日、救出作戦の模様を伝える映像を公開した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中