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「幸福の国」ブータンで有権者の不満が噴出

世界も羨む「国民総幸福」重視の国で与党が大敗した理由

2013年8月1日(木)17時31分
サンジェイ・クマル

外交でも失点? インドのシン首相と話すブータンのワンチュク国王 Adnan Abidi-Reuters

「GNH(国民総幸福)」重視を国是とし、経済成長より国民の精神的幸福を大切にしてきたヒマラヤの小国ブータン。しかし、今月中旬の国民議会選挙の結果を見る限り、国民の間には不満が広がっていたようだ。

 選挙では、与党のブータン調和党(DPT)が大敗。野党の国民民主党(PDP)が47議席中32議席を制して圧勝した。

 GNHを空疎なスローガンと批判したPDPの主張が有権者の共感を得た面もあったが、最大の援助国インドとの関係も選挙結果に影を落とした。インド政府は選挙戦の最中に、家庭用燃料などに関するブータンへの補助金を停止。これが物価急騰を招き、与党への逆風につながったとみる専門家は多い。

 近年、古くから密接な関係にあったブータンとインドの間に隙間風が吹いている。

 これまでブータンは、中国を警戒するインドに配慮した外交を進めてきた。しかし昨年6月、ブラジルで開かれた国連持続可能な開発会議の際、ティンレイ首相(当時)が中国の温家宝(ウェン・チアパオ)首相(同)と会談した。両国の首相が会談するのは、これが初めてのことだった。事前に聞かされていなかったインドは、これに驚いた。

 こうしたDPT政権の動きに、ブータン国民は不安を抱いたようだ。「国民は与党の火遊びに罰を与えた」と、開発・平和研究センター(インド)のワスビール・フセイン事務局長は言う。「ブータンの人々は、インドとの関係を自国の民主主義の土台と考えている」

[2013年7月30日号掲載]

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