最新記事

アフガニスタン

3度目の大幅増派に飛び付くな

優柔不断と言われてもオバマは増派以外の道を検討すべきだ

2009年11月26日(木)14時40分
ファリード・ザカリア(国際版編集長)

 ディック・チェイニー前米副大統領は、バラク・オバマ米大統領のアフガニスタン政策を「優柔不断」と批判している。オバマが中途半端な情報に基づいて早く結論を出せば、チェイニーはその勇気と決断力を認めるかもしれない。しかし、時間をかけてあらゆる選択肢を検討し、大統領選後のアフガニスタン情勢を今しばらく見てから決断を下すのも悪くない。

 アフガニスタン政策で問うべきは「大幅増派は必要か」ではなく、「3度目の大幅増派は必要か」だ。08年1月時点で、駐留米軍の規模は2万6607人だった。その後の半年間で、ブッシュ政権は4万8250人まで兵員を増やした。

 ジョージ・W・ブッシュ前大統領はこれを「静かな増派」と呼び、大規模な駐留が必要な理由としてお決まりの議論を持ち出した。米軍はイスラム原理主義勢力タリバンと戦うだけでなく、地元の人々を守り、アフガニスタンの軍と警察の訓練を行い、復興支援も行わなければならない、というものだ。

 09年1月、オバマ政権発足直後に、ブッシュが既に命令を下していた3000人の増派が実施された。さらに翌月、現地の司令官からの要請に応じて、オバマは1万7000人の追加増派を命じた。

 つまり、この1年半でアフガニスタン駐留米兵は3倍近く増えたわけだ。さらに今後数カ月間で4万人が送り込まれれば、08年1月のほぼ4倍に増えることになる。

 これまでの増派はなぜ効果を挙げなかったのか。なぜ今後の増派では効果が挙がると言えるのか。そうした点をじっくり検討することは「優柔不断」ではない。

 追加派遣の兵員数をめぐる議論は、まったく本質からずれている──こう喝破したのは、4万人の増派を要求したアフガニスタン駐留米軍のスタンリー・マクリスタル司令官だ。マクリスタルはアフガニスタン情勢を詳細に分析した報告書で、「最も重要な教訓は、米軍の戦略を大幅に変更することが急務であるということだ」と結論づけている。

誤った戦略が招いた悲劇

 これまでの米軍の戦略を知るには、アフガニスタン南東部クナル州の寒村ワナト村での戦闘を見るといい。08年7月13日、ワナトに設けられた米軍基地をタリバン兵士が包囲。数時間にわたる激しい戦闘で、米兵9人が死亡した。何年もの間、1回の戦闘でこれだけの犠牲者が出たことはなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

来年のIPO拡大へ、10億ドル以上の案件が堅調=米

ビジネス

英中銀、5対4の僅差で0.25%利下げ決定 今後の

ビジネス

ノバルティスとロシュ、トランプ政権の薬価引き下げに

ビジネス

中国の鉄鋼輸出許可制、貿易摩擦を抑制へ=政府系業界
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中