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「日本型ウェルネス市場」の可能性...少子高齢化が進む日本に必要なのは「健康を目指すコミュニティ」

2024年12月14日(土)11時00分
小林 薫(本誌記者)

少子高齢化が生む市場の変化と課題

日本では急速な少子高齢化と人口減によって消費市場が縮小する一方で、新しいニーズも生まれている。たとえば、働く高齢者の増加に伴い、動きやすく機能的でありながらもスタイリッシュなウェアへの需要が高まっている。

また、コロナ禍を経て、リモートワークやオンライン会議も定着。パソコンを日々持ち帰るためにリュックサックで通勤する光景は日常のものとなり、それに伴い動きやすい服装とそれに合う靴など、仕事におけるファッションにも変化が起きた。

そのため、アスレジャー(Athleisure)と呼ばれる機能性とファッション性を兼ね備えた、日常着に進化したスポーツウェアが人気で、スポーツブランド各社はアスレジャー製品に注力。近年、その市場は拡大を続けている。

中でも目覚ましいのはルルレモンで、2023年には前年同期比で20%近くの成長を遂げている。これまで「女性向けヨガウェア」としてのイメージが強かった同社が急成長を遂げているのは、ビジネスシーンでも着ることのできる男性向けウェアラインで、近年は男性顧客の増加が顕著だという。

多数の国内外ブランドがひしめく、アスレジャー分野での競争は激しいが、品質に厳しく、環境意識の高い消費者が多い日本は、むしろ同社にとっては強みになるとテューダー氏は自信をみせる。

「製品のクオリティには絶対的な自信があります。見た目が美しいだけでなく、長持ちするように製品を作っており、その結果、10年前、15年前の製品を今も着続けている人が少なくありません。この点は、環境意識が非常に高く、大量消費社会を見直し、1つのものをより長く使おうという機運が急速に高まっている日本社会で共感していただけるものと思っています」

ルルレモン渋谷

Courtesy of lululemon 12月14日にオープンする日本最大店の「ルルレモン渋谷」。「世界的にも日本の象徴となっている渋谷のスクランブル交差点近くに旗艦店を構えることができたことは、弊社が地域社会に受け入れていただけた証しです。だからこそ、その期待に応えなくてはいけません。そのためにも地域コミュニティづくりにかかわる、さまざまな定期的なプログラムを準備しています」とテューダー氏。


日本のウェルネス市場に大きな可能性を見据え、日本社会におけるウェルビーイングの普及と向上を目指す同社だが、真の意味で「ウェルネス先進国」になれるかは日本社会のほうも同時に問われている。

企業と社会が協力して、持続可能なコミュニティを市民とともに築き上げていく――。グローバルな視点から社会的責任を果たしていく同社の姿勢は、今後、日本のウェルネス市場の発展と拡大にとって大きな参考となり、「日本型ウェルネス」の世界への発信にも重要な役割を果たしていくだろう。


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