最新記事
アレルギー

花粉症が引き起こす「食物アレルギー」が増加中----2人に1人が悩む時代の最新ワクチン・治療法

2025年2月13日(木)17時33分
村田 幸久(東京大学大学院農学生命科学研究科准教授)*東洋経済オンラインからの転載

早く実用化したいのですが、まだ時間がかかります。診断薬は、企業が興味を持って開発してくれなければ実現しません。

診断や治療の開発に、市場が絡むのは当然ですが、この『アレルギー』では、治療薬開発にまつわる市場についても言及されていて、すごいなと思いました。

がんや心臓病など生死にかかわる疾患にたいする治療薬の開発とは違い、多くはQOLを下げるだけのアレルギー疾患の市場は大きくはありません。開発コストがペイしないということですが、大学などのアカデミアが頑張るしかないですね。


質量分析装置という高価な装置を使えば、すぐにでも尿のマーカーを数値化してモニタリングすることが可能です。

しかし、それを大学の研究室ではなく、万人が使えるような安価なキットにしなければなりません。現在そのキットの開発を我々の研究室では進めています。

「食べて治す」を実現したい

乳児期に口から食べ物を入れる前に、荒れた皮膚から抗原が入ってしまうことが、食物アレルギーを発症するリスクの1つであることが証明されました。

これにより、アレルギーの予防法の1つとして、乳幼児の皮膚を保湿して守ってあげるという啓蒙が、広がりつつあるかと思います。

またアレルギーに対する薬の開発も進んできました。本書にも紹介されていた「デュピルマブ」と呼ばれる治療抗体の効果は、花粉症や喘息、アトピー性皮膚炎に対する効果が証明されています。

しかし、まだ新しい薬ですし、安価とは言えません。金銭的には負担がおおきく、気軽に利用できる選択肢とは言えないかもしれません。

ちなみに私の研究室は農学部にあります。アレルギーは病気や薬だけ見ても、減りません。これまでお話してきたように、食を含む環境と深い関係がある疾患です。

アレルギー学において、農学、環境学、食品化学が果たすべき役割の広さと深さを実感する日々です。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏がMRI検査、理由明かさず 「結果は完璧

ワールド

米中外相が電話会談、30日の首脳会談に向け地ならし

ワールド

アルゼンチン大統領、改革支持訴え 中間選挙与党勝利

ワールド

メキシコ、米との交渉期限「数週間延長」 懸案解決に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大ショック...ネットでは「ラッキーでは?」の声
  • 3
    「平均47秒」ヒトの集中力は過去20年で半減以下になっていた...「脳が壊れた」説に専門家の見解は?
  • 4
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 5
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 6
    中国のレアアース輸出規制の発動控え、大慌てになっ…
  • 7
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 8
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    「死んだゴキブリの上に...」新居に引っ越してきた住…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中