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使用済みコピー用紙を「その場で再生」──セイコーエプソン「PaperLab」が実現した水平リサイクルの効果とは

2025年12月26日(金)17時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー

同製品の中核を担う技術「ドライファイバーテクノロジー」は、紙の再生において従来不可欠だった水をほとんど使用しない点が最大の特徴だ。「細断」「繊維化」「結合」「成形」の技術で構成されており、使用済みの紙を衝撃力で繊維に戻し、結合素材を使用して加圧・成形までを装置内で行う。

水を使う湿式製紙とは根本的に仕組みが異なり、機器内部の湿度を保つためにごく少量の水を使用するものの、給排水設備は不要。バックオフィスやロビーなど、多様な現場に特別な設備なしで設置できる。

紙を使用するプリンターメーカーの「環境に配慮した紙をオフィスで作る機器を開発できないか」という課題感から2010年に研究を開始し、16年に初代モデル「PaperLab A-8000」を発売。17年以降は官公庁や企業への導入も進み、25年現在の累計製紙量は約780トン(1億枚超)に及ぶ。

多様な導入例──社会的価値の創出にも一役

同製品は環境配慮型であるだけでなく、「地域共創」や「雇用創出」など、社会的価値の創出にも寄与している。

森ビル株式会社は、運営する麻布台ヒルズのテナント企業から排出されたコピー用紙を回収・再生し、各テナントに戻す取り組みを始めている。

福岡県北九州市でも、同製品を活用した地域共創活動「KAMIKURU(カミクル)」が行われている。使用済みコピー用紙を再生して名刺・ショッピングバッグ・卒業証書などへとアップサイクルする活動が展開されており、紙再生のための仕分け作業には障がい者が従事し、雇用創出や地域交流にも貢献している。

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北九州市で展開されている、PaperLabを活用した地域共創活動「KAMIKURU」のスキーム図 「KAMIKURU」プロジェクトより参照

また、2025年3月に発売が開始された最新モデル「PaperLab Q-5000/Q40」は製紙機本体と紙源プロセッサーの分離型で、製紙機本体から離れたさまざまな場所から古紙を回収できる。群馬県太田市では、市役所・小学校などの使用済みコピー用紙を市のリサイクルプラザに設置されたPaperLabで再生し、再配布する「地消地産」モデルを展開中だ。

同社が実現したPaperLabによる紙の再生は、SDGs目標12「つくる責任、つかう責任」と目標13「気候変動への取り組み」の達成に貢献する具体的なソリューションと言える。環境負荷という社会課題に対する解決策になっていると同時に、循環型社会を実現する担い手としての雇用や地域活動を生み出している点も特筆に値するだろう。

中核技術であるドライファイバーテクノロジーは紙だけでなく、古着を不織布に再生することもできるという。多様な応用が可能なこの技術を活用した今後の横展開にも期待したい。

◇ ◇ ◇


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