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虚構を超えたヘビメタ・ドキュメンタリー

'The Real Spinal Tap'

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情熱はどこまで本物?

「撮影中は何度も神に感謝した」と、ガバシは言う。「あんなネタはどう頑張っても考え付かない。あるときライブでリップスが悲鳴を上げ、腰を押さえてステージから駆け降りた。ロブのドラムソロの直前にシャウトした瞬間、イボ痔が飛び出したんだそうだ。彼らと一緒にいると、LSDでトリップし続けているみたいだ」

 当のリップスとロブはどう思っているのだろう。マンハッタンのバーで開かれた「ファンの集い」で聞いてみた。

 ロブは『スパイナル・タップ』と比較されることに食傷気味らしく、「俺たちはあの映画の前から活動してるんだ」と言う。リップスは「俺たちこそ本物のスパイナル・タップさ」と開き直るが、2人とも『アンヴィル!』で知名度が上がることを願っている。

 時を同じくして本家本元のスパイナル・タップ(マッキーン、ゲスト、シーラー)も、MTVの音楽番組『アンプラグド』のもじりで「アンウィグド(ヅラはなし)」と銘打ったツアーを開始。夏には新アルバムも出すが、音楽的な野心は抱いていない。彼らの目標はロックでファンをKOすることではなく、笑わせることだ。

『アンヴィル!』でリップスとロブがバンドへの飽くなき情熱を語る場面には胸が熱くなる。でも同時に、テレビのリアリティー番組を見ているような落ち着かない気分にもなる。「出演者」の言動はどこまでが演技なのか、最後の涙はどこまで本物なのか。

「風刺と現実の間の境界線は曖昧になった。既に消えてしまったのかもしれない」と、ライナーは言う。「今は芸術を模倣する現実を、さらに芸術が模倣する時代。次は誰かがアンヴィルのパロディーを作る番だ。何でもありの悪循環はもう止まらないよ」

[2009年5月20日号掲載]

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