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自ら望んだ「在宅ひとり死」をやり遂げた男の最期 看取り士が支える幸福な死とは

2021年9月18日(土)13時24分
荒川 龍(ルポライター) *東洋経済オンラインからの転載

「寂しいからテレビをつけるというのでは、たぶんないんです。普段からテレビを24時間つけっぱなしで過ごされていたので、『これでよし』と納得されたんだと思います。田中さんが最後までまっとうしようとされた暮らし方でした」

滋賀県で暮らす西河は、関西弁の抑揚でそうゆっくりと話す。田中の生き方に寄り添い、尊重する彼女の姿勢だった。

しかし、西河が田中にここまで信頼されるのは簡単ではなかった。

女性が苦手な男性宅の玄関で閉め出された日

西河が、ケアマネジャーから田中が極度の女性嫌いだと聞かされたのは、最初の面会後。ベテランの彼女も田中にはまるで取りつく島がなく、困り果てて西河に依頼してきたという。

定年退職後の田中は趣味の温泉めぐりに没頭し、車での移動生活を約5年間続けた。だが、がんが見つかって入院。放射線治療を受けて退院していた。

最初の面会から数日後、西河も1人で訪問すると案の定、田中に玄関ドアから閉め出された。彼は多少酔っていて、口から酒のにおいがした。

reuters__20210917_192102.jpg「自分で(生活)できるから迷惑なんだよっ!」

「はい、わかりました。今日は帰りますね」

西河は早々に退散し、数日後に素知らぬ顔で再訪した。

「また、来たんか。......仕方ないな」

田中はこのときドアを閉めなかった。室内に入ると飲みかけのパック牛乳からの饐(す)えた臭いと、アルコール臭が漂っていた。西河はちょっと窓を開けましょうかと言いながら換気をして、部屋をそっと片付けた。

この頃の田中は、まだ近所に歩いて買い物に行くことができた。配食サービスにはすぐに飽きて、毎回の食事はチョコレートと、ビールか焼酎のみ。

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