最新記事

アメリカが愛する大谷翔平

【大谷翔平MVP】アメリカに愛され尊敬される二刀流 ショーヘイはいかに「唯一無二」か

IT’S SHO-TIME FOR THE MLB

2021年11月19日(金)11時30分
スコット・ミラー(MLB専門スポーツジャーナリスト)

オールスター戦前日のホームラン競争で(7月12日、コロラド州デンバーのクアーズ・フィールド) DANIEL SHIREYーMLB PHOTOS/GETTY IMAGES

<MVP「満票選出」を果たした大谷翔平は、MLBにとって、ファンにとってどんな存在か。ショーヘイがアメリカで愛される理由とは。本誌10月12日号「アメリカが愛する大谷翔平」特集より>

大谷翔平は8月31日のニューヨーク・ヤンキース戦に、ロサンゼルス・エンゼルスの投手として先発登板するはずだった。しかし彼は、指名打者として打席に立っただけ。その3日前、大谷はサンディエゴ・パドレス戦での第1打席で右手首に投球が直撃し、まだ腫れが残っていた。

ヤンキース戦での登板が見送られたのは、大谷にとっても、アメリカ中にいる彼のファンにとっても、残念なことだった。大谷は6月末のヤンキース戦に先発し、1回ももたずに7失点でノックアウトされていたため、多くのファンがリベンジを期待していた。

手首の腫れのせいで、それはかなわなかった。ところが大谷は、この試合でファンの記憶に長く残るプレーを見せる。エンゼルスは5回に重盗を仕掛け、大谷は三塁からホームスチールを成功させたのだ。同一シーズンに勝利投手となると同時にホームスチールを成功させた例は、2001年以来だ。

現在の米大リーグ(MLB)で、最高にして最もエキサイティング、そして最も目が離せない選手──大谷がそんな存在であることを示す例が、また1つ加わった。

大谷はこの夏、毎週のようにアメリカ中を沸かし続けた。彼はまさにアーティスト。マウンドからは速球とスライダーでコーナーを丹念に突き、打者を翻弄する。そうかと思えば、打席では「傑作」の数々を生み出し、走者としてはスピードと知性を発揮して相手を粉砕する。

大谷はエンゼルスのクラブハウスでも、アメリカンリーグでも大人気。投打の二刀流として初めてシーズンを通してプレーする今年は、世界的に見てもMLBで最も人気のある選手になった。9月半ばには米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に、英王室を離脱したヘンリー王子夫妻らに並んで選ばれた。

「彼が成し遂げているのは大変なことだ。正直、理解に苦しむね」と、ヤンキースのアーロン・ブーン監督は言った。「打つだけでも大変だというのに、腕の心配をしつつ毎週投げるなんて想像できない。おまけに先発投手として、試合をつくらなくてはならない。とにかく彼は、誰よりも才能にあふれている」

今シーズンの各賞が発表される11月、大谷はアメリカンリーグ最優秀選手(MVP)の大本命となる。栄冠に輝けば、日本でキャリアをスタートさせてMLBのMVPを獲得する例は01年のイチロー以来だ。

関係者の間では、大谷が満票で選ばれるべきだという声も強い(その可能性もなくはない)。アメリカンリーグMVPの投票権を持つのは、全米野球記者協会に所属する記者のうち、わずか30人だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 8
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中