最新記事

世界に貢献する日本人

ガーナのカカオ農家に誇りを 田口愛(23)を突き動かす衝撃の体験【世界に貢献する日本人】

2021年11月19日(金)19時40分
大橋 希(本誌記者)
田口愛

「ガーナで事業を広げたい」と話す田口(アマンフロム村で) COURTESY AI TAGUCHI

<大学1年生のとき、ガーナを訪れた。そこで手作りチョコを振る舞って......。エンプレーソCEO、田口はただのチョコ好きではない>

今年1月のLINEリサーチによる調査で、チョコレートが「とても好き」「やや好き」と答えた人は計86%。スーパーやコンビニに並ぶチョコレートからショコラティエの手掛ける高級品まで、日本人はチョコレートが大好きだ。

Mpraeso(エンプレーソ)CEOの田口愛(23)も間違いなくその1人。ただ多くの人と違うのは、小学生の頃から「チョコの先にいるのはどんな人たち?」と気にしていたこと。そして、日本に輸入されるカカオ豆(チョコの主原料)の8割がガーナ産であることや児童労働の問題を知るようになり、「現地の様子を見たい」と思ったことだろう。

念願かなってガーナを初訪問したのは、大学1年生だった2018年6月。ある団体の紹介でカカオがよく取れるイースタン州アマンフロム村に行き、現地の人の元に6週間滞在した。

だが「チョコレートが好きでここに来た」と村人に話したところ、「この村には売っていないし、そもそも食費3日分くらいの高価なものだ」と言われた。現地のカカオ生産者にとって、チョコレートは遠い世界のものだった。

そこで田口はカカオ豆とサトウキビ、ヤギの乳でチョコを手作りし、みんなに振る舞った。

「自分で育てたカカオから作られたチョコを初めて食べた70歳くらいの女性に『人生で食べたものの中で一番おいしい』と言われた。カカオ農家の人からそれを聞く衝撃と、チョコを気に入ってくれたうれしさと。そのときの気持ちは今も原動力になっている」

アマンフロムのカカオを使ったチョコを生産・販売するため、日本でMpraesoを立ち上げたのが昨年6月。その後、本格的な工場を現地に建設する資金をクラウドファンディングで調達した。

初日に目標額100万円を達成し、最終的に約427万円を集めたが、予想外の反響に戸惑いもあった。

「(ファンディングのリターンの)チョコを大量生産することになり、作り方や包装に悩んだ。お客様から厳しい声も頂いた」

いい経験になったが、「あのときは1日に21時間くらいチョコを作っていた」と田口は笑う。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:中国の再利用型無人宇宙船、軍事転用に警戒

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中