最新記事

中国経済

想像を絶していた!中国鉄鋼の過剰生産

景気後退局面でもブレーキがかからない鉄鋼業界の不毛な過剰生産競争

2014年2月27日(木)15時55分
ソフィー・ソン

ジレンマ 鉄鋼生産量を削減すれば大量の失業者が出る China Daily-Reuters

 経済成長の波に乗って拡大の一途をたどってきた中国の鉄鋼業界。だが成長の鈍化に伴ってこの数年、鉄鋼業界の設備過剰が深刻化。にもかかわらず、中国最大の鉄鋼生産量を誇る河北省では、老朽化した生産施設の閉鎖をはるかに上回るペースで設備の新設が続いている。
 
 中国鉄鋼工業協会(CISA)の副事務総長、李新創(リー・シンチョアン)によれば、鉄鋼業界の余剰生産能力は3億トンという「想像を超える域」に達している。これは、昨年のEUの生産量の2倍近くに相当するという。

 景気の減速局面にあるにもかかわらず、今年の鉄鋼製品の需要は前年比3・2%増の7億1500万トンという緩やかな上昇を続けている。そのため、シェアを伸ばしたい鉄鋼メーカーは生産能力を引き続き拡大。中国の鉄鋼生産量は今年も3%増加するだろうと、CISAは予測している。

 もちろん、当局も問題は認識しており、老朽化した施設を閉鎖するようトップダウンで対策を進めている。例えば河北省唐山市では、今後5年間で4000万トン分の生産能力を削減する計画だという。ただし、目に見えた変化が現れるには何年もかかるかもしれない。
 
 鉄鋼の過剰生産は、悪化の一途をたどる大気汚染の一因でもある。鉄鋼産業で潤ってきた河北省は現在、生産能力の削減による環境汚染対策に先陣を切って取り組んでおり、2017年までに6000万トン分の生産能力を削減する計画だ。

 とはいえ、閉鎖される施設は老朽化のため、すでに半年〜1年前から休業状態だったものがほとんど。つまり、閉鎖しても温室効果ガスの排出量の削減にはほとんど貢献しそうにない。

 しかも、河北省では古い施設を閉鎖する2倍のペースで新規施設の増設が続いていると、中国最大の鉄鋼企業である河北鋼鉄集団のマーケティング責任者は明かす。「生産能力の削減目標が年間1500万トンなのに対し、新規設備の生産能力は3000万トン。つまり、閉鎖のスピードは十分でない」と、この人物は言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ圏CPI、4月はサービス上昇でコア加速 6月

ワールド

ガザ支援の民間船舶に無人機攻撃、NGOはイスラエル

ワールド

香港警察、手配中の民主活動家の家族を逮捕

ビジネス

香港GDP、第1四半期は前年比+3.1% 米関税が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中