最新記事

米中関係

スパイ疑惑の中国企業、米市場撤退の真意

安全保障上の懸念を払拭できず、通信機器大手ファーウェイが米市場を放棄するが

2013年12月19日(木)13時17分
シャノン・ティージ

中国の手先? どんなに否定してもファーウェイのスパイ疑惑は晴れなかった Darley Shen-Reuters

「もはやアメリカ市場には関心がない」──英フィナンシャル・タイムズ紙によれば、中国の通信機器大手ファーウェイ(華為技術)の上級副社長がこう述べたという。アメリカ市場からの撤退表明と言えそうだ。

 意外な決断ではない。同社はこれまで安全保障上の懸念を理由に、アメリカ市場への参入を阻まれてきたからだ。アメリカのテクノロジー企業などの買収や提携も度々妨害された。

 同社の任正非(レン・チョンフェイ)CEOは、既に撤退の意向を示唆していた。先月末、仏メディアのインタビューに対して、米中関係全般に悪影響を及ぼしてまでアメリカ市場への進出を目指すのは「割に合わない」と述べている。

 中国政府が同社のために介入するのではという臆測も否定した。ファーウェイのアメリカでの売り上げは10億ドルほどで、米中貿易全体から見ればわずかな金額にすぎない。それに同社は民間企業で、中国政府に対する影響力も乏しいと任は語った。

 ファーウェイのアメリカ進出にとりわけ大きな打撃になったのは、昨年10月に発表された米下院情報特別委員会の報告書だ。同委員会はこの報告書で、米企業に対して同社との取引を控えるよう求めた。

 同委員会のマイク・ロジャーズ委員長は、「ファーウェイとZTE(中興通訊)、および両社と中国の共産主義政府との結び付きに重大な懸念がある」と発表した。「中国はサイバースパイ行為を大々的に行っていることで知られており、両社は調査の過程で懸念を和らげることができなかった」

欧州では快進撃が続く

 委員会の措置は、同社の実際の行為が理由ではなく、同社と中国政府とひそかに深く結び付いているのではないかという疑念に基づくものだった。おそらく、人民解放軍出身という任の経歴も影響しているのだろう。

 7月には、マイケル・ヘイデン元CIA長官の発言が飛び出した。元長官は、「(ファーウェイが)外国の通信システムに関する詳細で膨大な情報を中国政府に伝えている」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

西欧の航空会社、中国他社より不利=エールフランスC

ビジネス

午前の日経平均は続伸し最高値、高市首相誕生への期待

ワールド

ブダペストでの米ロ会談、ハンガリーとの良好な関係背

ワールド

トランプ氏、中国との公正な貿易協定に期待 首脳会談
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 7
    米軍、B-1B爆撃機4機を日本に展開──中国・ロシア・北…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 9
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 10
    若者は「プーチンの死」を願う?...「白鳥よ踊れ」ロ…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 6
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 7
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 8
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 9
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 10
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中