最新記事

企業

ヤフーのメイヤーCEO、1年目の成績表

業績はぱっとしないが、企業イメージを回復し社内ムードを変えた手腕は評価すべき

2013年7月29日(月)16時30分
ファハド・マンジュー

前進あるのみ メイヤーの2年目が正念場となるのは間違いないが Beck Diefenbach-Reuters

 企業の決算報告に関する電話会議といえばたいてい退屈で、途中で憂さ晴らしにツイッターでもしないとやってられない。だが、先週のヤフーの第2四半期決算報告会はひと味違っていた。

 まず、CEO就任から1周年を迎えたマリッサ・メイヤーが、電話会議ではなくウェブキャストで生配信を行った。前例のない試みだ。

 さらに決算の報告というより、メイヤーが持論を訴えている感じだった。業績は芳しくなかった。第2四半期の売り上げは前年同期比で7%減。最大の収益源であるディスプレイ広告事業は11%落ち込んだ。

 ともあれ、こうした数字はメイヤーのプレゼンでは「添え物」でしかなかった。彼女の真の狙いは、ヤフー再建は一夜にして成らず、もっと時間が必要だと市場を説得することだった。

 私も最初は懐疑的だった。ウェブキャストはメイヤーがこれまでやってきたことを象徴しているように見えたからだ。派手さはあるが中身がない。

 つまり、ヤフーが抱える問題に真正面から取り組むのではなく、その問題から私たちの目をそらそうとしているように思えた。だがメイヤーが話し始めてから、あることに気付いた。彼女にとっては企業イメージがすべてなのだ。

 ヤフーは長年、投資家やライバル企業からIT戦争の敗者と見なされてきた。メイヤーは、ヤフーに対する悪評は同社が抱える問題の表れではなく、問題そのものだと捉えていた。

 だからこそ、彼女はこれまで企業イメージの回復に全力を投じてきた。人気ブログサービスのタンブラーを11億ドルで買収して話題を呼んだことはその一例だ。ヤフーのイメージアップが最優先、業績は後から付いてくるとメイヤーは主張する。

わずか1年で離職率は激減

 彼女は再建計画を「連鎖反応」と呼んでいる。ヤフーにまず求められるのは、優秀な社員の確保だ。人材が集まれば、良質な商品も生まれる。良質な商品はヤフーへのアクセスを呼び込み、いずれ売り上げも伸びる。メイヤーいわく「人から商品、そしてアクセス、増収へ」。

 IT企業のCEOは皆、自社の企業文化をきちんと形成することが重要だと語る。社員が職場に行きたがらないようなひどい雰囲気の会社は絶望的だ。この業界で成功するには、面白いアイデアが生まれるような雰囲気が不可欠だ。 

 メイヤーはこの1年で、そんな社風をもたらすことができたと実証した。彼女がCEOに就任して以来、ヤフーの離職率は60%近くも下がったという。さらに今年ヤフーに入社した従業員の12%は出戻りだ。

 連鎖反応の第2段階も実を結びつつある。より効率的かつ生産的な社風は、写真共有サイト「フリッカー」のリニューアルなど、さまざまな商品の見直しにつながった。メイヤーによれば、ヤフーのアクセス数は今年に入って着実に上向いている。

 問題は、ヤフーが今後も上昇気流に乗り続けられるかだ。メイヤーはこの1年で、ヤフーの商品の多くをライバル企業と同等のレベルに引き上げた。とはいえ今後、画期的なアプリやサービスでライバル企業を出し抜けるかは未知数だ。

 ヤフーの社風が改善されたのも、グーグルの元副社長であるメイヤーというビッグネームがCEOに就任したことへの好意的な反応といえるかもしれない。もしそうなら、業績の低迷がまだ続くなか、社員の士気をいつまで高く保てるだろうか。

 張りぼての成功は永遠には続かない。2年目が厳しくなるのは間違いない。ただこの1年に関して言えば、メイヤーは合格点に値する。

© 2013, Slate

[2013年7月30日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米太陽光発電設備、25年は設置減少 トランプ氏政策

ワールド

イスラエルはレバノン攻撃停止すべき、不安定化を助長

ビジネス

アマゾン傘下ズークス、自動運転試験を全米10都市へ

ワールド

原油先物下落、トランプ氏発言で供給の長期混乱懸念後
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「一日中見てられる...」元プロゴルファー女性の「目のやり場に困る」密着ウェア姿がネットを席巻
  • 4
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 5
    ダイヤモンドのような「ふくらはぎ」を鍛える最短ル…
  • 6
    ホルムズ海峡封鎖、石油危機より怖い「肥料ショック」
  • 7
    人間ダンサーを連れて「圧巻のパフォーマンス」...こ…
  • 8
    「巨大な水柱に飲み込まれる...」米海軍がインド洋で…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    プーチンに迫る9月総選挙の暗雲
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 4
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 5
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 6
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 7
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 8
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 9
    核合意寸前、米国がイラン攻撃に踏み切った理由
  • 10
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...…
  • 9
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 10
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中