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グーグルが個人情報を軽視するワケ

グーグル・バズのプライバシー侵害で分かる「対応後回し」で新サービスを始めるグーグルの向こう見ず文化

2010年2月19日(金)17時44分
ニック・サマーズ

王者の憂鬱 グーグル・ブックスでもグーグル・ウェーブでも先走って痛い目もあった Robert Galbraith-Reuters

 昨年12月、ニューズウィークはグーグル社からの訪問を受け、その検索エンジン大手がいかにプライバシー保護に注力しているかを説かれたことがある。ユーザーの検索履歴を保管する期間を短縮したとか、データの匿名性に関する新しい評価基準など、ユーザーがグーグルに安心して個人情報を預けられるようにするさまざまな取り組みについて宣伝していった。

 ところが今、同社は2月9日に発表したグーグル・バズというお粗末な新サービスでつまづいている。ツイッターやフェースブックに対抗するソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)としてGメールに追加されたバズ。うっとうしいのに加えて、ユーザーが頻繁にメールをやりとりしている相手のリストが公開されてしまうという欠陥があった。

 どうやらグーグルはプライバシーの尊重という高尚な目標を掲げながらも、新技術ついては「まずやってみて、対応は後回し」という文化を持ち続けているようだ。これでは、技術開発の激しい競争のなかで、プライバシーの問題が無視されてしまうのも当然だ。

 世界の情報を管理し、世界中の人々がアクセスして活用できるようにする──グーグルはこの理念を誇りに思うあまり、新製品を世に送り出す際の慎重さが足りない。

慎重になっていたら出し抜かれる

 例えばグーグル・ブックス。グーグルは紙媒体に詰められた知識のすべてを検索可能にするという計画に囚われ、出版業界からの異議申し立て、和解金1億2500万ドルの支払いは予想していなかった。グーグル・ウェーブでは、電子メールを超える次世代のコミュニケーションツールを発明したと酔いしれた。サービス開始から間もなくユーザーから「複雑すぎて使いにくい」と当惑気味に嘲笑が起きるまでは。

 そして、グーグル・バズの発表だ。グーグルはプライバシー問題を深く考えもせず、独自のSNSを立ち上げたことにまたも陶酔しきっているようだった。

 このようにグーグルが先走ってしまう理由の1つは、インターネットの世界がものすごいスピードで進化していることにある。ビデオチャットのサイトについて素晴らしいアイデアがひらめいたとしよう。だが慎重に開発を進めていたら、同じことを思いついたロシアの子供に先を越されるだろう。

「誰もが新しいサービスに慣れるまでに大変な思いをする」と、グーグルでプロダクト・ディレクターを務めるキース・コールマンは言う。「だからバズをクリックしたら、すぐに友人たちの情報が見られるものを作ろうとした。ここで私たちは(ユーザーインターフェースの設定について)誤った判断をしてしまった」

 こうした情熱や積極性はグーグルの魅力の一つといえる。だが同社は1700億ドル企業。立場とその影響力をわきまえ、もっと慎重になる必要がある。

「聖域」に足を踏み入れた

 ネット上の個人情報については、確かに一体どこからがプライバシーの侵害なのか線引きがあいまいになってきている。かつては多くのユーザーが、自分の毎分ごとの行動を世界に発信するという発想に仰天していた。現在では人々は自分がトイレに行く回数までツイッターでつぶやいている。

 しかしだからといって、バズのプライバシー侵害が許されるわけではない。グーグルは人々が「保護」に分類しておきたい電子メールという神聖な領域に踏み込んだ。さらにこの騒動で見落とされているのは、バズには携帯電話でも使用できる機能があり、外出時にメッセージを投稿するとユーザーの詳細な居場所が分かるという問題だ。

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