コラム

トランプはいつも「コード」破り

2017年12月12日(火)17時30分
ロブ・ロジャース(風刺漫画家)/パックン(コラムニスト、タレント)

©2017 ROGERS─PITTSBURGH POST─GAZETTE

<守るべき人をいじめたり、批判するべき人を擁護したりと、トランプはいつも道徳規範(code)を破ってしまう>

第2次大戦中、各国の軍は通信内容の機密性を保つため、独自の code(暗号)を使っていた。当然、敵国に code break(暗号解読)をされると大変なことになる。現に、ミッドウェー海戦で奇襲攻撃を計画していた日本は米軍に暗号を解読され、逆に攻撃を受けて4隻の空母が沈没する羽目になった。code を守ることは大事だ。

暗号システムは国によって異なる。ドイツはエニグマという機械を、日本は暗号書という本を使った。一方、アメリカは先住民のナバホ族を起用し、ナバホ語で通信した。

先日、暗号要員だったナバホ族の英雄たちをたたえる行事にドナルド・トランプ大統領が登場(嫌な予感がするのはなぜかな?)。そこで彼は、先住民の血を引く民主党のエリザベス・ウォーレン議員を Pocahontas(ポカホンタス)とからかった。植民地開拓者を助けたという先住民女性だが、その名は先住民をばかにする差別用語でもある。当然、会場は凍り付いた。

これが初めてではない。トランプは常にショッキングな言動を取る。風刺画のピンバッジが示すように、Ban Muslims(イスラム教徒の入国禁止)、LGBTQ(性的少数者)の人権侵害、Build a Wall (国境に壁を建設)などなど、人を傷つけるような政策を推しまくる。

発言もそうだ。「Grab'em by the P***y(女性たちの性器をつかむ)」と言って、性的暴行を自慢した。白人至上主義デモに抗議した女性がひき殺された事件では、「Many Sides(複数の方面)の差別や暴力を非難する」と言い、犯人側をかばった。Climate Change(気候変動)はフェイクニュースだと主張した。

イスラム教徒であるロンドンのSadiq Khan(サディク・カーン)市長をばかにした。ベトナム戦争で5年半も捕虜になった国民的英雄 John McCain(ジョン・マケイン)議員を「ヒーローじゃない」とけなした。一方で、米大統領選に介入したロシアの Putin(プーチン)大統領を褒めたたえる。まさに口は災いのもとだ。

守るべき人を虐げたり、批判すべき人を擁護したりと、道徳規範(code)を常に破る大統領。それが Moral Code Breaker だ。こんな奇襲攻撃でアメリカが沈没しないといいけどね。

【ポイント】
NAVAJO CODE TALKER

ナバホ族の暗号話者

DUMP DACA
16歳未満で不法入国した移民への救済措置(DACA)の破棄

NAZIS ARE PEOPLE TOO!
ナチスだって人間だ!

LOCK HER UP!
彼女(ヒラリー・クリントン元大統領候補)を投獄しろ

BIRTHER IN CHIEF
バーサー(バラク・オバマ前大統領は外国生まれだとする人々)最高司令官

本誌2017年12月19日号[最新号]掲載

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!

気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを

ウイークデーの朝にお届けします。

ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イランで大規模デモ、景気低迷への抗議で死者も トラ

ワールド

シャンパンボトルの花火が原因か、40人死亡のスイス

ワールド

ベネズエラ大統領、米と関係改善意向 麻薬協議・投資

ビジネス

テスラ、25年販売9%減で首位転落 中国BYDが世
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 3
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 4
    感じのいい人が「寒いですね」にチョイ足ししている…
  • 5
    【現地発レポート】米株市場は「個人投資家の黄金時…
  • 6
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    日本人の「休むと迷惑」という罪悪感は、義務教育が…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    「断食」が細胞を救う...ファスティングの最大効果と…
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 3
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 4
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 5
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 6
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 7
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 8
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story