コラム

小池新党の政権構想、自民との大連立の可能性は?

2017年10月03日(火)17時10分

問題はそこから先です。石破首班で大連立して何をやるのかというと、やはり憲法改正に取り組むことになるのだと思われます。安倍首相の提案した9条3項加憲などというのは葬り去られて、本格的な改憲へ行く可能性です。ですが、そうは簡単には行かないでしょう。そこで世論やメディアの批判を受け、そして政権内部の動揺や不和が起きていくとして、そのタイミングでは「改めて民意を問う」という形で、再度解散が行われるのではないでしょうか。

仮に石破首班で行き詰まりが出てきて解散するのであれば、石破首班のままでは議席を減らすことになります。かといって、石破氏など自民党が政権離脱して勝ち目があるかというと、それも分かりません。

そんな中で、それこそ三顧の礼か何か色々な手続きを踏んだ形で、「大連立の与党みんなに頼まれたから」という格好にして、小池氏の国政復帰、選挙後に小池首班で組閣というような展開になるのではないでしょうか。その頃までには、東京都知事の後継も見えてくるでしょう。

もちろん、そうすんなり行くかどうか、分かりません。特に公明党の動き方、あるいは大阪維新の動き方などによっては、小池新党の思い通りにはならないかもしれません。

そうであっても、この現代社会、つまり相当に盤石に見えた安倍政権もアッと言う間に崩壊が始まってしまうという、恐ろしい世の中を制するためには、安易な手法ではダメなのでしょう。自分が政権を獲得し、それだけではなく、政権を巧妙に運営し、名誉を手にして任期を全うするのには、このぐらいの「手の込んだ」シナリオは必要です。

ちなみに女性を首班とした「国難対応の大連立」ということでは、ドイツのメルケル首相の事例が思い起こされます。小池氏というのは、新党などを渡り歩いてきた「風見鶏」であるとか「節操がない」などという批判も浴びていますが、反対に、細川政権の失敗と小泉政権の成功を当事者として見てきた歴史の生き証人でもあります。勝負に出た以上は、良くも悪くも、このぐらいの見通しは持っているのではないでしょうか。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ホームレス化の危機にAIが救いの手、米自

ワールド

アングル:印総選挙、LGBTQ活動家は失望 同性婚

ワールド

北朝鮮、黄海でミサイル発射実験=KCNA

ビジネス

根強いインフレ、金融安定への主要リスク=FRB半期
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ公式」とは?...順番に当てはめるだけで論理的な文章に

  • 3

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32、経済状況が悪くないのに深刻さを増す背景

  • 4

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 5

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離…

  • 6

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 7

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story