コラム

それでも悪化しなかった米経済...2026年「3つのリスク要因」と最重要な「生成AIの経済効果」

2025年12月11日(木)11時15分

3つのリスク要因:労働市場、インフレ、FRBの独立性

いくつかリスク要因がある。

まず、労働市場に関しては、企業による生成AIの導入の進展が若年層などの労働環境に影響を及ぼしていることが、FRBなどでも議論されている。ただ、労働市場全体への影響は限定的で、FRBの金融緩和によって対応可能な程度の影響とみられる。

関税引き上げでインフレが長期化する点もリスクになる。財価格の上昇で、消費者物価コアは前年比+3%前後で推移している。これまでは関税コストの多くを企業が負担してきたとみられるが、2026年にかけて企業による価格転嫁が進むだろう。ただ、2025年に労働需給が緩和しているため、2026年にコアインフレ率は+2%台に落ち着くと予想される。

3つ目のリスクとして金融市場で意識されているのが、FRBの独立性の棄損である。2026年5月にジェローム・パウエルFRB議長の議長職が任期満了となるが、後任にはトランプ政権に忠実な者を選び、さらに、利下げに前向きなメンバーで執行部を固める展開が予想される。トランプ政権下で「中央銀行の独立性」が損なわれることがリスクとされている。

ただ、それは杞憂だろうと筆者は考えている。そもそも時の政権が、FRBメンバーを選定するのは当然である。どのような人事選定であっても、物価安定と雇用最大化の目標実現のために金融政策の判断が行われる状況は変わらない。

FRBは12月会合で利下げを行い、2026年3月に再度利下げを行った後は、経済成長率が2%を超える中で、3.5%の水準で政策金利を据え置く、と筆者は予想している。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

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