コラム

それでも悪化しなかった米経済...2026年「3つのリスク要因」と最重要な「生成AIの経済効果」

2025年12月11日(木)11時15分
FRBのパウエル議長

米連邦準備制度理事会(FRB)は12月10日、政策金利0.25%の利下げを決定した。米経済はこれからどうなるか REUTERS/Craig Hudson

<トランプ政権による関税引き上げが米国自身にも負担となったが、米経済の減速は緩やかで済んだ。2026年、米経済は2%を超える成長に回帰するだろう>

2025年は米国を中心に世界の株式市場が総じて上昇し、いわゆるリスク資産のリターンは引き続き良好だった。金融市場の活況が続いた最大の要因は、トランプ政権のもとで米国経済が緩やかに成長を続けたことにある。

トランプ政権は4月初旬に、中国だけではなくほとんどの国に対して関税を課すことを発表。世界不況の到来が懸念され、株式市場は一時急落した。

ただ、当初発表された関税引き上げには至らず、米国の実効関税率は15%の上昇にとどまるとみられる。もちろん、関税引き上げは米国を含めた世界各国の製造業や消費者にも負担が及ぶ。

また、FRB(米連邦準備理事会)の政策金利が年央まで4.5%の水準で据え置かれ、金融政策が引き締め的に作用したことも加わり、米国経済は2025年前半に年率1.6%の成長にとどまった。労働市場の需給も緩和し、4%付近だった失業率は、10月には4.5%付近まで少しずつ上昇した。

それでも、経済の減速は緩やかであった。なぜか。

トランプ政権は関税引き上げを行ったが、一方で大型の減税・歳出法(OBBB法)を7月に可決、財政政策を刺激的に作用させる政策を実現した。さらに、FRBが9月会合から利下げを開始、マクロ安定化政策がそろって経済押し上げ方向に作用する。

関税引き上げが「自傷政策」であることは間違いないが、トランプ政権のメンバーは、金融財政政策を適切に実施する重要性を理解している。2026年になれば、減税政策が家計所得を押し上げるなど政策効果が顕在化するため、米経済は2%を超える成長に回帰すると筆者は見込んでいる。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

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