コラム

キム・カーダシアンが「キモノ」を盗用!? 日本人女性の抗議で炎上

2019年06月27日(木)19時38分

6月13日には、ニューヨークの高級ブランド「キャロリーナ・ヘレラ」がメキシコの特定の地域に根差す柄や刺繍などをコレクションに使っているとし、メキシコ文化相が同ブランドに「文化の盗用」として書簡を送ったことが判明した。英紙ガーディアン(同日付)によれば、「これは倫理的配慮の問題だ」と書簡に書かれていたという。「見過ごされている人たちに光を当て、包摂を推進すべく、国連の持続可能な開発アジェンダで取り上げるべき緊急課題だ」と。つまり、メキシコの地域住民の文化を商品化しながら、その貧しい住民らには何ら恩恵がいかないという点を問題視しているのだ。

一方、他国の文化でも、当事者の承認や受容があれば問題にはならない。例えば、日本式の結婚式に招待された米国人が着物で出席したら、むしろ歓迎されるだろう。だが、ハリウッドスターが肌を露出させて着物を着崩した場合、反発が予想される。

カウボーイもダメ?

とすれば、例えば日本人がベトナム旅行でアオザイを買って帰国し、日本流に着こなすのは、米国の「文化の盗用」基準にのっとれば、まずいことになる。もともとは古代エジプトやインドの宗教的儀式に端を欲するといわれるボディーアート「ヘナタトゥー」のファッション的利用もアウトだ。

日本の大学にハロウィーンの仮装ルールがあるかどうかは知らないが、米国の大学の中には、学生に対し、ネイティブ・アメリカンの羽飾りはもちろん、カウボーイのコスチュームやメキシカンハットなどを禁ずる例も増えている。前出のケリー氏が失言した番組に特派員として出演したブッシュ元大統領の次女、ジェナ・ブッシュ・ヘイガー氏は、カウボーイ(牧場労働者)文化の象徴であるテキサス出身なだけに、大学のコスチューム・ポリス化をケリー氏とともに大いに批判し、盛り上がっていた。

カーダシアン氏の一件を受け、文化の盗用は知識のなさや認識の甘さからくると指摘する専門家もいる。知らないうちに他国や他人種、他民族を傷つけたり不快にさせたりしていないか、米国よりPC基準が緩い日本だからこそ、改めて考えてみる必要がありそうだ。

20190702issue_cover200.jpg
※7月2日号(6月25日発売)は「残念なリベラルの処方箋」特集。日本でもアメリカでも「リベラル」はなぜ存在感を失うのか? 政権担当能力を示しきれない野党が復活する方法は? リベラル衰退の元凶に迫る。

プロフィール

肥田 美佐子

(ひだ みさこ)ニューヨーク在住ジャーナリスト。東京都出身。大学卒業後、『ニューズウィーク日本版』編集などを経て、単身渡米。米メディア系企業などに勤務後、2006年独立。米経済・雇用問題や米大統領選などを取材。ジョセフ・スティグリッツ、アルビン・ロスなどのノーベル賞受賞経済学者、「破壊的イノベーション」論のクレイトン・クリステンセン、ベストセラー作家のマルコム・グラッドウェルやマイケル・ルイス、ビリオネアAI起業家のトーマス・M・シーベル、ジム・オニール元ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント会長など、米(欧)識者への取材多数。元『ウォール・ストリート・ジャーナル日本版』コラムニスト。『週刊東洋経済』『経済界』に連載中。『フォーブスジャパン』などにも寄稿。(mailto:info@misakohida.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀総裁、QT継続を示唆 金利リスク削減に向け

ビジネス

インタビュー:日本の買収大型化も、保険資本活用プラ

ビジネス

スタバ労組のスト拡大、全米34都市でバリスタ数百人

ワールド

トランプ氏の州兵派遣措置、費用は3.4億ドル=上院
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれなかった「ビートルズ」のメンバーは?
  • 3
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキャリアアップの道
  • 4
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 5
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 6
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 7
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナ…
  • 8
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎…
  • 9
    ピットブルが乳児を襲う現場を警官が目撃...犠牲にな…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story