アングル:タイ与党に問われる改革実行力、選挙大勝で政治混乱は一服
写真は2月8日、バンコクで取材に応じる、アヌティン首相。REUTERS/Patipat Janthong
Orathai Sriring
[バンコク 9日 ロイター] - タイで8日に行われた下院総選挙は、アヌティン首相が率いる与党「タイの誇り党」が定数500のうち193議席を獲得する予想外の大勝で第1党となり、繰り返される政治の不安定化に悩まされてきた経済に当面プラスの影響を与えそうだ。
しかし、今後強力な連立の枠組みを通じて次期政権を担おうとするアヌティン氏にとっては、経済が是非とも必要としている構造改革を推進して中期的な成長を達成することが重大な課題になるだろう。
キャピタル・エコノミクスのシニア・アジア・エコノミスト、ギャレス・レザー氏は「総選挙結果は目先の政治リスク低減に役立つはずだ。しかし厳しい経済の見通しにほとんど変化を及ぼさない」と9日のノートに記した。
レザー氏は「次期政権が受ける本当の試練は、短期的なポピュリズム政治を乗り越え、タイの長期的成長の足を引っ張っているより根深い問題に取り組めるかどうかになる」とみている。
選挙結果を受け、タイの主要株価指数は3%余り上昇し、過去1年余りでの最高値に達した。
とはいえ2025年の国内総生産(GDP)成長率が2.2%と見込まれるタイは、近隣諸国に比べて成長ペースが見劣りしている。これは家計債務の増大や高齢化、米国の関税、通貨バーツ高といった幾つもの要因が組み合わさったからで、財務省によると今年の成長率も2%にとどまると予想されている。
OCBCグループ・リサーチはノートに「さらに観光業や外国からの直接投資で近隣諸国との競争が強まっており、タイ経済は岐路に立たされている」と記した。
<成長鈍化懸念>
誇り党は選挙戦で、零細企業や低所得層への支援を含めた「10プラス計画」で成長率を3%超に押し上げると約束した。
しかし、ベリスク・メープルクロフトのシニア・アジア・アナリスト、ローラ・シュワルツ氏は「アヌティン氏と誇り党は全般的に企業寄りだと見なされている」としつつ、体制派として行動してきた誇り党の経歴からすると、包括的な構造改革意欲は限られるように見受けられると付け加えた。
エクニティ財務相は選挙後初めての発言機会で、次期政権が今年中に国家が推進・承認した総額4800億バーツ(約153億9000万ドル)相当のプロジェクトを実際の投資に転換すると述べた。
またエクニティ氏は、政府が消費者補助金制度の第2段階を準備中だと説明。これは約440億バーツ規模の第1段階に続くもので、推定2000万人を対象に一部食品・消費財の費用の半額を補助する。「このプログラムは現在設計中で、次期政権の発足を待つことになる」という。
政府高官の1人は9日、次期政権は4月末までに発足する公算が大きいとの見通しを示した。
スタンダードチャータード銀行のシニアエコノミスト、ティム・リーラハパン氏は、政府が元本据置・無利子の3年間債務猶予制度を拡大する可能性もあると述べた。これは当初、不良債権化した236万件の小口口座を支援する目的としていた。
それでも経済成長は少なくとも年半ばまでは低調に推移し、10月に始まる27年度予算は数カ月遅れる可能性があるため支出開始が来年1月下旬にずれ込む公算が大きい、とティム氏は想定する。
主要産業団体、タイ工業連盟のクリエンクラーイ・ティエンヌクル会長は、民間セクターは今年度に経済成長が鈍化する可能性を懸念しており、これにより家計レベルの経済問題への対応圧力が高まる恐れがあると述べた。
会長は「政府は国民の生活費問題解決、短期的な景気刺激、汚職取り締まりを同時並行的に進めなければならない」と訴えた。





