マクロスコープ:自民圧勝で揺れる霞が関、「官邸の思い通り」か「逆サプライズ」か
写真は高市首相。2月8日、自民党本部で代表撮影。REUTERS
Tamiyuki Kihara Yoshifumi Takemoto
[東京 9日 ロイター] - 衆議院選で高市早苗首相(総裁)率いる自民党が歴史的圧勝を遂げたことに、霞が関が揺れている。政府内でも党内でも権力が高市氏に集中し、多くの政策決定が首相官邸主導で進むとの懸念があるからだ。関係者からは「すべて官邸の思い通りになる」「止められるのはマーケットしかない」などとの声も聞かれる。
<権力構造は変わるか>
「ちょっと勝ち過ぎだな」。8日夜、自民の圧勝を伝える選挙速報を見ながら経済官庁関係者はこうつぶやいた。
あらゆる政策は官邸と関係省庁、そして与野党を交えた駆け引きの中で進むのが常だ。省庁の立場からすれば、例えば財務省は有力政治家の後ろ盾を得ることで時の政権に対する発言力を高めてきた経緯がある。ここ数年であれば自民の麻生太郎副総裁や岸田文雄元首相などだ。首相はこうした有力者の顔を立てることで、党内や野党との関係をまとめてもらう。ウィンウィンの関係が出来上がっていた。
ただ、今回の選挙結果はこうした権力構造を変えかねない。「高市人気」に支えられて当選した候補らが、党内で反旗を翻すことは考えにくい。自民単独で法案再可決も可能な3分の2議席を占めたとなれば、野党との交渉にもさほど心血を注ぐ必要はなくなる。高市氏は誰に気を遣うこともなく、自身の政策遂行ができるというわけだ。
これまでも高市氏は「一人でこもって政策を練るタイプ」(官邸幹部)と言われ、側近であるはずの官房副長官や秘書官にもなかなか本音を見せないとされてきた。前出の経済官庁関係者は「しばらくは、すべて官邸の思い通りになるだろう」と話した。別の関係者も「これだけ圧勝してしまうと、我々はしばらく静かにしているしかない」とうなだれた。
<恐れるマーケットの大混乱>
一方、高市氏が強固な政権基盤を築いたことで、マーケットとの対話が進みやすくなるとの見方もある。高市氏は「責任ある積極財政」を掲げ、危機管理投資や成長投資に加えて飲食料品の消費税ゼロなどを矢継ぎ早に打ち出してきた。財務省関係者は「首相は掲げた政策にはこだわるだろう」とした上で、「これだけ圧勝すると新たに攻めた政策を打ち出す必要がなくなる。むしろ高市氏が恐れるのはマーケットの混乱による求心力の低下だ」と見る。
複数の関係者によると、2026年度当初予算の編成作業でも高市氏はマーケットの動きを常に気にしていた。複数の関係者は「首相はいまも為替や金利の動向に敏感だ」と説明。そのうちの1人は「多くの議席があるだけに、首相が変な方向に進んでいると判断すればマーケットは大混乱だ」としつつ、「長期政権も見据えられる状況だ。『意外と穏当に政策遂行する』という逆サプライズもあり得る。首相を止められるのはマーケットだけだ」と話した。
<「私は柔軟性が取り柄」>
自民幹部らの認識はどうか。鈴木俊一幹事長は8日夜、テレビ番組で「3分の2の議席を預かるとしても謙虚な姿勢で臨んでいきたい」と強調。「野党の方々の意見にもしっかり耳を傾けてやっていく。できる限り全会一致を目指すという心構えで進めていきたい。決して数を頼みに強引に物事を前に進めようという姿勢はとらないようにする」と述べた。鈴木氏は麻生派に所属する。高市氏による過度な官邸主導をけん制した形だ。
いずれにしても、今後の政権運営は高市氏の判断に委ねられる部分が大きい。同日のテレビ番組で「圧勝しても聞く耳を持つか」と問われた高市氏は、こう語った。「私は柔軟性が取り柄だ。野党から良い提案があったらしっかり受け止め、政策を実行するための財源も含めてしっかり考えたい」
(鬼原民幸、竹本能文 編集:橋本浩)
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