アングル:聖職者指導層に反旗翻すイラン商人、経済への不満が抗議デモの発火点に
写真は12月30日、テヘランにあるグランドバザールで撮影。抗議活動の余波で閉店中の店が目立つ。WANA提供。REUTERS
Parisa Hafezi
[ドバイ 12日 ロイター] - 経済情勢への不満が本格的な反政府抗議デモに発展したイランでは、1979年のイラン革命を経済的に支え、聖職者を権力の座に押し上げるのに一役買ったバザール(市場)の商人らが、聖職者らに反旗を翻している。
イランでは、エリート部隊であるイスラム革命防衛隊が厳重な権力構造を築いて経済統制を強める一方で、バザール商人の政治的、経済的影響力はこの数十年で減退。小規模な小売店主から大規模な卸売業者に至るまで、不満が高まっていた。
「私たちは苦境に立たされている。米国の制裁に加え、防衛隊かその関係者が経済を支配しているため、商品を輸入できない。彼らは自分たちの利益しか考えていない」と、数百年の歴史を持つテヘランのグランドバザールの商人は匿名を条件に語った。
イランの抗議デモは、12月下旬にこのグランドバザールで発生。店主ら数百人が通貨リアルの急落への不満を訴えた抗議の波は全土に広がり、聖職者指導層らにとってこれまでで最も重大な局面へと発展しつつある。
デモは急速に拡大して政治的な運動へと発展し、イスラム共和国の正統性に疑問を投げかけている。デモ参加者は、催涙ガスや警棒、そして多くの場合実弾で武装した治安部隊にひるむことなく最高指導者ハメネイ師の肖像を燃やし、「独裁者に死を」と叫んだ。
イランの指導者らは経済的困難を認めつつ、長年の敵である米国とイスラエルが騒乱を扇動したと非難している。イラン治安機関はこの数十年、民族反乱や学生運動、そして経済や自由を求める抗議活動を鎮圧しており、指導者層はこれを頼みにいかなる犠牲を払ってでも権力を維持しようと躍起になっているようだ。
テヘランを拠点とするアナリスト、サイード・ライラズ氏は、政府は事態を掌握できていないと述べた。
「驚くべきは、この騒乱がバザールで始まったことだ。商人にとって根本的な問題はインフレではなく、価格の乱高下であり、そのために買うべきか売るべきか判断できなくなっている」と同氏は語った。
イランでは、インフレにより多くの商品の価格が一般人の手の届かない水準にまで押し上げられている。一般市民と聖職者や治安エリートとの間の経済格差、そして国営メディアさえも報じた経済政策の失政や政府汚職が、国民の不満に火を注いだ。
イランの通貨リアルは2025年 、ドルに対してほぼ半分の価値を失い、公式インフレ率は12月に42.5%に達した。
<経済を支配>
イラン革命を指導したホメイニ師によって創設された革命防衛隊は、80年代のイラン・イラク戦争後にイランの主要産業に投資する許可を得たことで、経済的な影響力の足場を確保した。
その後数十年で、防衛隊の影響力は、ハメネイ師の全面的な支援と、イランを事実上世界金融・貿易システムから締め出した西側の制裁によって生じた機会の恩恵を受けて飛躍的に拡大。防衛隊は現在、石油から運輸、通信、建設に至るまで、幅広く経済を支配している。
テヘランでカーペットを扱うある商人(62)は、防衛隊は自分たちの経済的利益を守ることに長けており、危機はまだ終わっていないと述べた。
「政府は問題を解決したいと考えているが、このシステムではそのための手段も力もない。経済をコントロールしているのは政府ではない」と、この商人は話した。
制裁対象の原油を秘密裏に輸送する「影の船団」から、主に中国に石油を売るフロント企業、石油輸送網まで、制裁下にあるイランの石油産業のあらゆる部分が防衛隊の影響下にある。
あるイラン高官は、「防衛隊が原油販売で得る石油収入のうち、どれだけ国に還流しているのか誰にも分からない。彼らはあまりにも強力で、誰も問うことはできない」と述べた。2013年から21年まで大統領を務めたロウハニ師は、防衛隊が予算削減に抵抗していると公然と非難し、繰り返し衝突した。防衛隊のビジネス網や資産を抑制しようと試みたが、おおむね失敗に終わった。
聖職者階級は経済力を手放した一方で、忠実な防衛隊と民兵組織「バシジ」に頼り、民族蜂起や学生運動、経済的困難に対する抗議活動を暴力的に鎮圧し、政治秩序を維持してきた。
「国が外国の脅威に直面しているという微妙な状況を考えると、ハメネイ師は経済への影響力を削いで防衛隊を動揺させることはできない。体制側は、抗議活動を鎮圧し、外国の脅威に対抗するために防衛隊を必要としている」と、ロウハニ師に近い関係者は述べた。





