ニュース速報

ワールド

ウクライナのダム決壊、4.2万人に洪水被害リスク 国連「生計失う」

2023年06月08日(木)10時51分

 ウクライナ南部ヘルソン州のカホフカ水力発電所に設置された巨大ダムの決壊について、同国の当局者らはドニエプル川沿いのロシアとウクライナの支配地域でおよそ4万2000人が洪水被害に遭う危険性があると予想した。国連の支援責任者は重大な影響が広範囲に及ぶと警告した。タス通信提供(2023年 ロイター)

[ヘルソン(ウクライナ) 7日 ロイター] - ウクライナ南部ヘルソン州のカホフカ水力発電所に設置された巨大ダムの決壊について、同国の当局者らはドニエプル川沿いのロシアとウクライナの支配地域でおよそ4万2000人が洪水被害に遭う危険性があると予想した。国連の支援責任者は重大な影響が広範囲に及ぶと警告した。

ウクライナとロシアは互いにダム決壊の責任が相手側にあると非難。ウクライナはロシアが意図的に旧ソ連時代のダムを爆破するという戦争犯罪を犯したと批判し、ロシア側はウクライナがこのほど開始した反転攻勢のつまづきから注意をそらす狙いがあると主張した。

国連の人道支援責任者であるマーティン・グリフィス事務次長は安全保障理事会で、ウクライナ南部の何千人もの人々が住宅や食料、安全な水を失い、生計を立てられなくなるなどの重大な影響を受けると警告。「数日中にこの大惨事の重大さについて全容を知ることになるだろう」と述べた。

死者は報告されていないが、米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は多くの死者が出た公算が大きいと指摘した。

ダムから60キロメートル下流のヘルソン市では6日に水位が3.5メートル上昇し、住民は膝まで水につかりながら避難を余儀なくされた。

冠水する危険性がある約80の集落には住民を避難させるためにバスや列車、民間車両が動員された。ロイターの記者は6日夜に市内の住宅地域の近くで、住民が避難しようとする中で砲撃の音が4回鳴り響くのを聞いた。

ドニエプル川沿いのロシア占領地域にある動物園は水没し、300匹の動物が全て死んだという。関係者がフェイスブックの公式アカウントに投稿した。

米国はダム決壊の責任の所在は明らかではないとしているが、ロバート・ウッド国連代理大使は、ウクライナが自国の領土と国民に対してこのようなことをするのは理にかなわないと指摘した。

ジュネーブ条約では、民間人に危険が及ぶためダムは紛争時の標的にしてはならないと定められている。

ウクライナのゼレンスキー大統領は定例のビデオ演説で、同国の検察当局が既にダム破壊の捜査に国際司法を関与させるよう国際刑事裁判所(ICC)の検察官に打診していると明らかにした。

一方、国際原子力機関(IAEA)はダムの貯水池から原子炉の冷却水を取水していたザポロジエ原子力発電所について、貯水池の上にある池から「数カ月」は冷却水を取水できるとの見通しを示した。

*動画を付けて再送します。

ロイター
Copyright (C) 2023 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が

ビジネス

NY外為市場=ドル対ユーロで軟調、円は参院選が重し
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中