ニュース速報

ビジネス

焦点:ルノーが日産に譲歩、仏側のメリット見えず

2023年02月01日(水)07時21分

 日産自動車と仏自動車大手・ルノーは30日、出資比率見直しなどの新たな合意を発表し、20年余りに及ぶ日仏連合を活性化させる大きな一歩と位置付けた。しかし、現時点でルノーにとって新合意のメリットは不明確であり、その具体的な内容は非常に限定的なものになる可能性があると業界筋はみている。写真はルノーのロゴ。パリで2022年10月撮影(2023年 ロイター/Stephane Mahe)

[パリ 30日 ロイター] - 日産自動車と仏自動車大手・ルノーは30日、出資比率見直しなどの新たな合意を発表し、20年余りに及ぶ日仏連合を活性化させる大きな一歩と位置付けた。しかし、現時点でルノーにとって新合意のメリットは不明確であり、その具体的な内容は非常に限定的なものになる可能性があると業界筋はみている。

ルノーは、日産への出資比率を約43%から15%に引き下げる。実施には取締役会の承認が必要となる。

日産にとってのメリットは明確だ。経営の裁量が大きくなり、不平等だった資本関係が対等になる。ただ、ルノーは保有している38億ユーロ(41億ドル)相当の日産株を信託会社に信託した後、どこかの時点で売却するため、日産株が圧迫される可能性はある。

合意では、ルノーが設立する電気自動車(EV)新会社の「アンペア」に日産が出資する。ルノーにとってアンペアは重要な事業目標だ。

だが、日産のアンペア出資には多くの「ただし書き」が付く。現時点で合弁プロジェクトの内容は漠然としている。しかも日産がルノー株15%について議決権を取得することで、ルノーは同社と意思決定を共有せざるを得なくなる。

複数の関係者によると、両社は共同プロジェクトを5件ほど検討しているが、これはルノーのルカ・デメオ最高経営責任者(CEO)が昨年日産に提案した10―15件に比べて少ない。

関係者の1人は「金銭的側面を別にすると、今のところルノー側にとって合意の具体的な恩恵は多くない」と述べた。

「日産がアンペアに参画することは、たとえ出資だけであってもルノーにとって興味深い。中南米とインドの事業に重点を置くことも、規模のメリットという面で興味深い。だが、数字が全く示されておらず、非常に漠然としたままだ」という。

発表後、ルノー株は下落した。

ルノーの株主であるセスガ・アセット・マネジメントのグレゴワール・ラベルン氏は「ある意味で、(今回の合意は)最初の提携の失敗を意味する」と語った。

複数の関係者によると、合意のより詳しい内容は、2月6日にロンドンで公表される見通しだ。

<仮定の話>

日産・ルノー連合は、会長だったカルロス・ゴーン被告の逮捕・解任で深い傷を負った。

関係者らによると、新たな合意の試金石となるのがアンペアだ。

ルノーは一早くEVに参入したものの、今では後発の米テスラなどの後塵(こうじん)を拝している。

同社が賭けるのが、内燃機関の車ビジネスとは切り離して発足させるアンペア。最大100億ユーロの評価額で上場し、純粋なEV企業として競争に再参入する狙いだ。

業界筋は「仮に日産が資金と資源をエンジニアリング――技術とチーム――に注ぐなら、かなり良いサインになり、連合は少なくとも部分的に継続するだろう。ただ、現在のところは仮定の話でしかない」と言う。

30日の発表では、経営プロジェクトについては大まかな構想しか示されなかった。

両社は既に工場があり合弁生産を行っている中南米、インド、欧州について、市場、車両、技術に関するプロジェクトを検討している地域だと強調した。

先の業界筋は「日産がルノーの議決権を握るため、連合は日本側の意志に縛られることになる」と話した。

ルノーの事業簡素化を期待していたアナリストらは昨年11月、デメオCEOが事業を5つの独立部門に分割すると発表したことに失望していた。

ルノーは中国・浙江吉利控股集団(吉利集団)、米クアルコム、米グーグルとの提携強化も発表。このうち吉利はルノーの内燃機関事業に多額の出資を行う。

複数の関係者によると、多くの外部企業への技術流出を警戒する日産は、こうした提携強化について間口を広げ過ぎだと考えるかもしれない。

30日の発表を受けてルノー株が下落したことについて、株主であるクレールインベストのIon-Marc Valahu氏は、ルノーが日産株の売却時期や、各部門の経営執行方法について新たな情報を示さなかったことと関係がある、との見方を示した。

(Gilles Guillaume記者)

ロイター
Copyright (C) 2023 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米下院、政府機関閉鎖回避に向けつなぎ予算案審議へ 

ビジネス

FRB0.25%利下げ、6会合ぶり 雇用にらみ年内

ビジネス

ウェイモ、リフトと提携し米ナッシュビルで来年から自

ワールド

トランプ氏「人生で最高の栄誉の一つ」、異例の2度目
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中