ニュース速報

ビジネス

アングル:欧州銀行株、金融危機開始時上回る猛烈な売り

2016年02月10日(水)10時22分

 2月9日、欧州の大手銀行株に対する売りの動きは、2008年に金融危機が始まった時点よりも激しくなっている。年初来で欧州銀の時価総額は25%近く、金額にして2400億ドル超が失われた。写真はブダペストで2011年11月撮影(2016年 ロイター/Laszlo Balogh)

[ロンドン 9日 ロイター] - 欧州の大手銀行株に対する売りの動きは、2008年に金融危機が始まった時点よりも激しくなっている。年初来で欧州銀の時価総額は25%近く、金額にして2400億ドル超が失われた。そして直面しているのは、もつれ合ったさまざまなマクロ経済面の懸念が、8年間にわたるコスト削減やバランスシート健全化、リスク回避戦略の成果を台無しにしかねないという厳しい現実だ。

原油価格下落や中国経済の減速、世界的な金融市場の混乱などは、投資家を不安にさせている多くの要因のほんの一部にすぎない。

これとは別に、欧州銀行セクターは不良債権のために資本不足に陥っているのではないか、あるいはマイナス金利で純利ざやが圧迫されて、預金者に手数料を課さなければならなくなるのではないか、といった懸念もある。

銀行がこれら多くのハードルを乗り越える必要があるとすれば、株主へのリターンが上向くのははるか先の話に見受けられる。

アリアンツ・グローバル・インベスターズのグローバルストラテジスト、ニール・ドウェイン氏は「銀行セクターに買いのシグナルは存在しない」と話した。

ドイツ銀行、ウニクレディト、クレディ・スイスの年初来の株価下落率は、いずれも08年初めから同年2月8日までの2倍に達した。

欧州上位15行のうち、年初来の株価下落率が8年前の同期間よりも小さいのは、INGとノルデア銀行しかない。それでもINGの下落率は21%、ノルデアは15%だ。

<個別問題>

ストックス欧州600銀行株指数<.SX7P>の年初来の下落率は24%で、やはり8年前の17%より大きい。

トムソン・ロイターのデータからは、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)で銀行債投資家の懸念が強まっている状況も分かる。

HSBCやドイツ銀、バークレイズ、スタンダード・チャータードのCDSプレミアムはいずれも10年ぶりの高水準に近づいてきた。

各銀行はそれぞれが幾つもの固有の問題を抱え、投資家の売りを促している。

ドイツ銀は8日、債券利払いが維持できるかどうかが不安視されて、株価が何年ぶりもの安値に沈んだ。HSBCとスタンダード・チャータードは、減速を続ける中国経済向け貸出債権の大きさが主な株安要因だった。

一方でバークレイズについては、自己資本のうち普通株等Tier1の増強が必要になるのではないかとの観測が浮上した。

<楽観論も>

欧州銀行への投資家の不信感が強まっている中で、間の悪いことに大手米銀のさえない業績が発表された。それでも一部の投資家は、金融危機時よりも今の方が銀行株の先行きは明るいとみている。

ロイヤル・ロンドン・アセットマネジメントのシニアファンドマネジャー、アンドレア・ウィリアムズ氏は「銀行の株主にとって今は心配すべき時期ではあるが、リーマン破綻がもたらした危機の際ほどひどい事態とは思わない。なぜなら欧州中央銀行(ECB)が追加緩和する態勢にあり、金融システムの緊張はまだ顕現化していないからだ」と指摘した。

その上でウィリアムズ氏は、ECBとしては市場心理改善のために単なる利下げだけではなく、思い切った措置を講じる必要があるかもしれないと述べた。銀行のバランスシートに重くのしかかっている不良資産の一部を、ECBが買い取り始める可能性があるという。

アビバの欧州株式責任者マーク・デンハム氏など他のファンドマネジャーは、銀行株をめぐる現在の混沌とした状況から少なくとも長期的に投資家が利益を得られる方法を探る手掛かりとして、大手行ではリストラの取り組みが加速するかどうか、中小行では積極的に再編に動くかどうかに注目している。

(Sinead Cruise、Richa Naidu記者)

ロイター
Copyright (C) 2016 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は横ばい、前日安から反発後に失速 月初の需

ビジネス

午後3時のドルは155円後半で小幅高、円売りじわり

ビジネス

英、ESG格付け規則を28年施行へ 利益相反懸念に

ビジネス

ユニクロ、11月国内既存店売上高は前年比7.6%増
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯終了、戦争で観光業打撃、福祉費用が削減へ
  • 2
    【クイズ】1位は北海道で圧倒的...日本で2番目に「カニの漁獲量」が多い県は?
  • 3
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 4
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 9
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 10
    600人超死亡、400万人超が被災...東南アジアの豪雨の…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中